「羅生門」はやっぱり、フィルムで。 [「映像」なかま]
映像なかま-6
「羅生門」はやっぱり、フィルムで。
16ミリ映画を守り続ける、東京・府中市視聴覚研究会の活躍
●長編は2台の映写機を途中で切り替えて上映。映写中の諸橋満寿恵さん
今年は巨匠・黒澤明監督の没後10年(2010年は生誕100 年)。それをきっかけに、最近「椿三十郎」と「隠し砦の三悪人」が相次いでリメイクされたこともあって、若い世代にも黒澤映画の面白さが浸透し、クロサワブームの再来をみております。
そんな中、去る5月24日(土)午後1時半から、東京は府中市立住吉文化センターにおいて「住吉名画劇場」と銘打った黒澤映画鑑賞会がタイムリーに催されました。上映作品は黒澤監督の代表作「羅生門」です。映画「羅生門」は、芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」という2本の小説をミックスして練り上げられた映画で、主演の三船敏郎をはじめ、森雅之、京マチ子、志村喬といった当代の人気俳優が脇を固め、人間の醜いエゴを容赦なく描き出した傑作として、当時、大きな話題を呼びました。製作は1950(S25)年ですが、翌1951年秋に行われた「第12回ベネチア映画祭」でグランプリ受賞を果たし、日本映画が初めて国際的な名声を得た記念すべき作品として記憶されています。
●上 映画「羅生門」のモデルとなった府中市・東郷寺の大門
●下 映画「羅生門」のオープンセット(文化出版局「日本映画史大鑑」より)
今回、上映作品として「羅生門」が選定された理由には、実はもう一つ、訳があります。それは、羅生門のオープンセットのモデルになった寺院が府中市にあるからでした。春にはみごとな枝垂桜で親しまれている「東郷寺」というお寺なのですが、その壮観な大門は、まさに「羅生門」のイメージにピッタリ、ということで黒澤監督のお眼鏡にかなったのでした。いわば映画「羅生門」は、府中市民にとって郷愁と同時に誇りを呼び覚ます映画でもあるのでした。
●会長は1924(T13)年生まれで83歳。16ミリ操作のベテラン、高橋忠雄さん。
●左から堀江成子さん、設楽厚子さん、運営の様子をビデオで記録する肥田元成さん
ところで、すばらしいのはこの会の運営です。主催は府中市ですが、実際の運営は「協力」の名で府中市視聴覚研究会によって行われています。府中市視聴覚研究会の創設は1986(S61)年。開設当時は市の広報活動や学校教育の場などで16ミリ映画は大きな役割を果たしていました。ところが最近のように、ビデオやDVDが主流を占めるようになると、次第に16ミリ映画の活躍の場が減ってきました。けれども、「フィルムで製作された映画のテイストはフィルムでこそ」というポリシーを頑なに守ってきた視聴覚研究会では、市と手を携えて、子供向け、大人向け、学校での映写会と年3回の16ミリ映画上映活動をボランティアで継続。今では一時減少した観客も次第に戻って、次回を待ち望む声も聞かれるようになったということです。
この日、会場には整理券を持った市民が続々と集まりました。昔の映画を懐かしむ世代に留まらず、黒澤監督の映画が大好きという若い世代の顔も見え、100名の定員いっぱいの盛況でした。府中市視聴覚研究会の活動は全市の文化センターに及んでいますが、「映画という文化を自分たちの手でみんなのために」という熱意によって、地域に根付いた文化センター事業として営々として続けられていることにこころを打たれた「名画劇場」でした。
●府中市視聴覚研究会のみなさん
左より諸橋満寿恵さん、設楽厚子さん、堀江成子さん、高橋忠雄さん、堀江成佳さん
●三笠書房 昭和27年刊「シナリオ羅生門」定価60円。当時、シナリオが出版されることは珍しいことでした。これは映画大好き人間の堀江成佳さんの宝物です。
■府中市の16ミリ映写機定期点検でも大活躍
一般に公共施設や学校で活用される16ミリ映画の多くは、公立図書館などのライブラリから借り出して上映されます。フィルムはとても繊細で傷つきやすい上、本番でライトがつかないとか音声がでないとか、アクシデントがあってはいけません。そのために府中市でも年1回、16ミリ映写機の保守点検が行われているのですが、ここでも府中市視聴覚研究会の皆さんが活躍しています。
この写真は、市内の文化センターや学校に備えられている16ミリ映写機を一堂に集めて、視聴覚研究会のメンバーが指導に当たっているところです。施設に据えつけてある映写機については、メンバーが出向いて点検・整備を指導しています。
●府中市生涯学習センターに全市の16ミリ映写機を集めて定期点検を行う府中市視聴覚研究会のみなさん
おはようございます
「東郷寺」今度訪れてみようと思います
黒澤明監督の作品 子供の頃は難しいと思いましたが
今 観ると とても良いですね
リメイクって とても厳しいですね
「椿三十郎」を観たけど どうも やっぱり三船さんでしょうって
by いぬ (2008-05-30 04:55)
いぬさん、おはようございます。早速のコメント、ありがとうございます。
東京競馬場の近くの東郷寺、最寄り駅は京王線「多磨霊園」。歩いても10分と掛からないでしょうか。とてもいいところですよ。
上の写真は数年前のビデオからコマ抜きしたのですが、ちょうど桜が咲いているころです。特に枝垂桜がいいんですよ。ぜひ来年訪れてみてください。
ところでたまたまですが今日の午後、遅まきながら「椿三十郎」を観に行きます。三船敏郎を知らない世代向けに新しい三十郎像が作られているはずですから、三船を知っている層には違和感があるのでしょうね。
by sig (2008-05-30 09:50)
石原さんからメールを頂きましたので転載させて頂きます。
府中、国分寺の例のように、折角の機材を活かして、いろいろな場所で16ミリ映画の上映会が行われるといいですね。(sig)
こんにちわ。府中市視聴覚研究会には知人が何人かいますが、その活躍は素晴らしいものがあります。
私も映画好きが集まる「シネマ恋ヶ窪」というグループに所属し、16ミリ映画の上映会を地域の公民館と共済で年4回、映画講演会を3回ほど行っています。講演会は映画評論家を招いて行っています。昨日実行委員会が開かれ、今年度の企画会議が行われました。
6月5日には「喜びも悲しみも幾年月」を上映することになっており、その準備に追われています。この会は主に昔の名画を上映することに重点を置いています。 石原 恙逸
by sig (2008-05-30 12:50)
こんにちは
私のBlogへお越し頂き沢山のNiceとコメントありがとう御座います
住吉名画劇場良いですね~
素晴らしい活動だと思います
デジタル時代にアナログを大切にするこの活動は素晴らしいと思います
by Qoo (2008-05-31 17:30)
furukabaさん、ご来館ありがとうございます。
ブログの動画・京都シリーズ、たのしく拝見させていただいております。
by sig (2008-05-31 18:40)
八犬伝さん、ご来館ありがとうございます。
八犬伝さんの街発見ブログは、この「昭和館」と相通じるものがあり、楽しく拝見させていただいております。
by sig (2008-05-31 18:43)
Qooさん、こんばんは。
16ミリ映画はDVDなどのデジタル化が進むに連れ、活躍の場が狭まったようですが、アナログにもデジタルにもそれぞれいいところがあるわけで、私たちは両方の利点を上手に使い分ければいいと思うのです。
その意味でも、ボランティアで行われているこうした上映活動は意義あることだと思い、ご紹介しました。
by sig (2008-05-31 18:56)
モデルになったお寺が府中市にあるとは知りませんでした。
皆さん生きいきとして素敵な笑顔をされていますね。
好きな事に打ち込められるって、とてもいい事だと思います(^。^)
by puripuri (2008-05-31 22:51)
こんばんは
視聴覚研究会のみなさん、いきいきとしてらっしゃいますね!
いい顔をしてらっしゃいます。やっぱり好きなことが、一番でし、
自分が愛して止まないものを、みんなに知ってもらう。
これが大事なのかもしれませんね!
by TAKA (2008-05-31 23:08)
puripuriさん、こんばんは。
「生き生きとすてきな笑顔」・・・うれしいですね。府中市視聴覚研究会の皆さんに代わって、ありがとう、と申し上げます。
ここにご紹介した皆さんは、自分が得手の、あるいは好きな領域で地域のために何ができるかを考え、実行されています。これはボランティアの理想的な形だと思います。
写真においてもそういう考え方ができる訳で、そうすれば趣味を一歩深めたよろこび・・・自分のためにやっているのだけれど、人にも喜ばれる・・・という別のやりがいが生まれるかもしれませんね。
by sig (2008-05-31 23:48)
TAKAさん、こんばんは。
みなさん、はつらつとして、すてきでしょう。
それは与えられた仕事ではなく、皆さんそれぞれがご自分の意思で実行されていることから生まれる若さであり、笑顔であると思うんですね。
好きなことで喜んでもらえて、それがまた自分の喜びとなる。
そういうすばらしい考え方、生き方をご紹介したかったんです。
by sig (2008-06-01 00:11)
銀猫さん、こちらも見てくださって、ありがとうございます。
by sig (2008-06-02 10:42)
kemmさん、いつもご来館、ありがとうございます。
by sig (2008-06-02 19:01)
ChinchikoPapaさん、いつもご来館ありがとうございます。
16ミリはオールドメディアになりつつありますが、それを生かす方法を積極的に実践している府中市視聴覚研究会の皆さんのような活動が、全国的に盛り上がるといいなと思っております。
by sig (2008-06-03 10:13)
友人の16ミリ映画の撮影を、学生時代に手伝った憶えがあります。作品は待てど暮せど、観たことがないのですが・・・。(笑)
黒沢監督の「羅生門」は、そういえば親父は「らしょうもん」ではなく「らじょうもん」と発音していました。芥川原作の当初のルビがそうなっていたのか、それとも映画がRAJOUMONだったものか、いまだ気になっていたりします。
by ChinchikoPapa (2008-06-04 14:02)
Chinchiko Papaさん、こんにちは。
その16ミリ映画、関わった者としては是非見たいですよね。今なら簡単にコピーが作れたのに、残念ですね。
「羅城門」は平安京、平城京の頃、朱雀大路の南にあった大門で、寂れたあと死体置き場や盗賊の住処になっていたとのこと。芥川龍之介は「今昔物語」から「羅生門」を着想したらしいと言われているようですが、今昔物語で「羅生門」となっていたのか、あるいは作者が「羅生門」に替えたのか、そのあたりはよく分かりませんね。
by sig (2008-06-04 14:55)
mamaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-04 14:58)
映像にいそしむ者として(ネコ写真だけですが^^; )
やはりフィルムが一番♪
私も、黒沢監督の羅生門、DVDで持ってますが
一回はフィルムで拝見したいと思います。
by kontenten (2008-06-05 10:12)
kontentenさん、こんばんは。
いやあ、kontentenさんのネコちゃん写真はほんとにすばらしいです。
もうかわいくてかわいくて。
おっと、映画の話ですが、「羅生門」など当時の映画人は、フィルムで出せる情景の質感を極限まで引き出して表現しようと試みているんですね。
デジタルの時代になって、DVDやブルーレイなどで、その質感の再現が研究課題になっているようですね。
by sig (2008-06-05 19:23)