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今はまぼろしのマッチ箱電車 [あんなこと、こんなこと]

P1030925b-3.JPG  あんなことこんなこと―20
高校時代 1956~1958(S31-33)-⑧

今はまぼろしのマッチ箱電車
トッテツと呼ばれたローカル線があった【上】 

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●電車通学はトッテツで15
 遮るものも無い広い田んぼのはるか向こうに隣りの駅が小さく見え、電車が出発した様子が分かります。いつもの通学電車です。ゆっくりと近づいてくるのを見ながら少し足を速めて線路伝いに駅へ続く小道を急ぐと、速度を落とした電車と並ぶようにしてちょうど駅に到着します。乗客が乗り降りしている間に改札を通って乗車します。毎日繰り返される電車通学……高校生になってうれしかったことのひとつです。
 
私の通学区間はもよりの「浦瀬」から「長岡」の一つ手前の「袋町」まで5km程度。所要時間は約15分程でした。そこから長岡商業高校までは信濃川方面に向かって15分。家から浦瀬駅までは徒歩5分ですから、通学時間はかれこれ40分ほどになります。 

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●左/形の違う4両編成で走るトッテツ 1968(S43)頃
 右/線路は単線。「浦瀬」より下り方面の次の駅「加津保(かつぼ
)」を望む。
 どちらも帰省の際、8ミリ映画で撮影したものをコマ抜きしたもの

●バス、自家用車のない時代、中越の大事な足として
 この鉄道は「栃尾鉄道」といい、国鉄(現JR)長岡駅につながる中越東部のローカル線でした。「トッテツ」は言うまでも無く「栃尾鉄道」の略称です。
 営業区間は上杉謙信ゆかりの「栃尾」から新潟県第二の都市「長岡」を経由して桜や行楽の名所「悠久山」に至る全長26.5km。
 始点の「栃尾」から「上見附」あたりまでは山合いを走り、トンネルも一つ。
「上見附」から「下長岡」まではだだっ広いたんぼ一色の平野部を走り、
「下長岡」から終点の「悠久山」までは長岡の市街地を走るというように、とても変化に富む路線です。
「栃尾」から「長岡」方面は上り。その逆が下りです。 
 運行間隔は1時間に2~3本。もちろん各駅停車。
 時速は最高40km程度。全線通して乗車すると90分くらいだったと思います。
 地域の拠点となる大きな駅は駅舎も立派で、駅長さん、駅員さんもおりましたが、多くの駅はホームに待合所の小屋だけがあるというもの。そうした駅の昇降客に対しては車掌さんが車内を回って切符の販売・回収をしていました。
 当時の交通機関は、バスもなく自家用車も普及していませんから、沿線の人たちは栃尾へ行くにも長岡へ出るにも、この「トッテツ」が頼りでした。
 

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■栃尾鉄道(1956/S36より栃尾電鉄と改称)全駅名(1956年頃)
栃尾―楡原―上北谷―太田―本明-明晶-上見附
―名木野―耳取―椿沢―加津保―浦瀬―宮下―小曽根―下新保―下長岡―袋町長岡
―高校前―大学前―土合口―長倉―悠久山

始点の「栃尾」は、私が住んでいた「浦瀬」の山間部から連綿と連なる山塊のほぼ真裏に当たります。
2004年の中越地震で特に大きな被害を受けた山古志村(現在は長岡市)は、更にその奥です。

●愛称は「マッチ箱」。車両は全部かたちが違う
 
トッテツは線路の幅が762mmしかなく、大人がヨイショとまたげる狭軌鉄道です(ちなみに新幹線は1435mm)。車内の幅が狭いので、座席は車窓に沿った縦に長い形で、真ん中の通路は大人が一人通れる程度しかありません。車両は日中は2両編成ですが、通学・通勤のラッシュアワーには4両編成になります。いろいろなところからいろいろな時期に調達したものらしく、4両とも全部形と幅と長さがちがう上、横揺れがひどくて、走っている姿はでこぼこです。そんなところから「マッチ箱」というニックネームがついていました。
 私たちが利用していた1950年代後半の車両の多くは木製でしたが、中には比較的新しい金属車両も混じることがあり、その編成自体が「走る軽便鉄道歴史博物館」のような感じでした。

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●栃尾電鉄に変わって間もない頃の「長岡駅」1961(S36)年
 写真左の建物が駅舎で手前は改札 
 左の電車は下り・栃尾方面行き 右の電車は上り・悠久山方面行き  

(無音)
●「悠久山」へ向かう電車、長岡市街、田んぼの中を走る電車 1961(S36)年
  ドアは開いたままであることにご注目を。

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●上の動画で、田んぼの中を走る電車が走っていた場所
 右の小山のふもとが「加津保(かつぼ)」駅


 
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カメキチ

古きよき時代の電車、いいですね。私も現在の井の頭線(京王帝都電鉄)には思い出があります。「トッテツ」ほどではありませんでしたが、木造の2両編成の小さな電車でした。或る夏の日でした。母に連れられてこの電車に乗り渋谷に向かう途中、窓から首を出したとき、かぶっていた帽子を飛ばされてしまったのです。それは、その日のために買ってもらった帽子だったのです。貧しい家計の中から買ってくれた帽子、何とも情けなくて大声で泣いてしまいました。母は優しくまた買ってあげるから・・・・と慰めてくれたことを思い出しました。
by カメキチ (2008-08-05 11:13) 

sig

カメキチさん、こんにちは。
昔の電車は空調が無いため、冬と雨の日以外は窓を開けていたものでしたね。帽子を飛ばされた思い出は,かなりの方が体験しているのではないでしょうか。
折角買ってもらったばかりの帽子が飛ばされて悲しい思いをしたのは、お母さんに買ってもらったうれしさとありがたさをしっかりと認識していたからだと思います。ものを大事にする気持ちが染み込んでいた昭和のころを懐かしく思い出します。
コメント、ありがとうございました。
by sig (2008-08-05 11:55) 

sig

ChinghikoPapaさん、こんにちはるご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-05 16:22) 

puripuri

高校に入ると、近辺から汽車やバスで通ってくる人達が羨ましかったですよ。
農家の友達はイチゴを持って来てくれて、食後に食べたりしていました。
なにせ私は学校のすぐ傍でしたから、通学生にちょっぴり憧れたりした事もあります。 でも、当人達には通学も大変だったでしょう。
汽車に乗ると窓を開けていますね。まもなくトンネル・・・慌てて窓を閉めたり。 また、家に帰ってくると首や鼻の中は黒くなって、、(笑)
by puripuri (2008-08-05 18:42) 

sig

八犬伝さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-05 18:50) 

sig

puripuriさん、こんばんは。
puripuriさんは高校のすぐそばで、何かと便利でしたでしょうね。
電車通学は大変なこともありましたが、わくわくするような楽しいこともありましたよ。でも、それはヒミツ。ブログにも書きません(笑)。
次回は辛かった体験などを用意しておりますが、この路線が無くなってやはり寂しいですね。
puripuriさんのトンネルの思い出は、就職後、上越線で毎年「薮入り」(盆・暮れの帰省)をする時に、機関車でしたから必ず体験しておりました。
電車はその点クリーンですから、窓を開けていて平気なんですよ。
by sig (2008-08-05 19:04) 

sig

xml_xmlさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-06 23:41) 

花火師

こんなのがあったんですね〜
悠久山公園のあたりに名残がある場所とかありましたか?
なんか見た事があるような気がするんですが・・・
by 花火師 (2008-08-07 00:39) 

sig

花火師さん、こんにちは。
最近は帰省してもあまり出歩かないので、トッテツの跡はどうなっているのでしょうか。線路は取り外されましたし、1975年4月に全線廃止となってからすでに33年も経ちますから・・・。ホームの残骸のようなものはありそうな気がします。悠久山方面は当初から市街地でしたから、名残りを探すのは大変だと思います。
by sig (2008-08-07 08:50) 

sig

leoさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-07 22:51) 

sig

yannさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-08 16:55) 

sig

銀猫さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-10 14:23) 

sig

kemmさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。

by sig (2008-08-14 15:42) 

sig

Qooさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-17 16:29) 

sig

kurakichiさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-10-05 11:03) 

sig

urara☆さん、こちらまでありがとうございました。
by sig (2011-05-19 21:02) 

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