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明けても暮れてもヘンシンごっこ [あんなこと、こんなこと]

P1030925b-3.JPG  あんなこと、こんなこと―25
高校時代 1956~1958(S31-33)-⑬ 

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●電車を住まいにしている人物が登場するような作品をまだ演じていました。
 1958年 春季長岡市内高校演劇発表会にて
  

明けても暮れてもヘンシンごっこ
演劇かぶれだった高校時代【中】
 

●出し物はいわゆる「高校演劇」
 東京ことばに憧れ、夜、遠く田んぼを渡る風に乗って聞こえてくる上り列車の汽笛をまくらで聞きながら、都会を夢見ていた高校時代。大学受験はすでに視野外ですから、勉強は適当に。授業以外の時間はすべて演劇に費やしていました。家は文字通り食べることと寝るだけの場所でした。

 クラブ活動では年に4回の発表会がありました。4月の「新入生歓迎会」に始まり、7月は農業高校との提携による「合同演劇発表会」、10月は学校の文化祭である「長商祭」でのステージ、翌11月は「市内高校演劇発表会」、3月は卒業生を送る「予餞会」ということになります。練習期間の関係から、4月の「新入生歓迎会」はたいてい前年秋の出し物か1時間以内の小品。3月の「予餞会」は秋の「長商祭」と同じ出し物なのですが、それにしても年間3本を作り上げなければなりません。1本の稽古期間はおよそ3ヶ月程度です。
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 出し物は古今東西の名作などという大それたものではなく、たいてい高校生の身近な問題を扱った戯曲を集めた「高校演劇脚本集」「学生演劇全集」など、身の丈に合う戯曲の中から選定していました。こうした戯曲の書き手は現役の高校教諭であったり、戦時中プロレタリア演劇に関係していた戯曲家などが多かったようです。また、部活予算の中から購入していた月刊誌「悲劇喜劇」「テアトロ」も新劇の世界の空気に触れる大事な教科書でした。

 
ちなみに 長岡商業演劇部の1958(S33)年度の年間活動予算は18.760円。総じて文化部という名でくくられる演劇、美術、文芸、放送部などの予算はせいぜい25.000円どまりでしたが、庭球(テニス)、籠球(バスケットボール)、排球(バレーボール)、卓球、柔道など遠征を伴う運動部は30.000円~40.000円と高く、最高は野球部の127.450円でした。 

●共同作業でステージを作り上げるプロセスを学ぶ
 
演劇部では、公演に当たってみんながいろいろな脚本を読み、その中から上演作を決めます。ホンが決まると早々に脚本作りに入ります。脚本はガリ版と呼ばれた謄写版刷りで、みんなが分担してガリを切り、印刷・製本します。その作業と並行してスタッフ(裏方)、キャスト(出演者)を決めると、新劇をお手本に、本読み、立稽古、通し稽古、照明・音響を含めた舞台稽古と進めて行きますが、その間に衣装や小道具を見つくろったり舞台装置を作り上げなければなりません。スポーツと違って人気のある部ではありませんから部員は15名前後。キャストになったからといって演技だけに没入することは出来ません。演劇は総合芸術と呼ばれる通り、その表現分野は演技だけでなく美術、照明、音響効果、衣装、ヘア・メイク…と多岐にわたります。部活では演劇を形作るこれらの要素とステージを作り上げて行くプロセスを学ぶことに主眼を置き、背景もセット作りも当然共同作業です。

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●みんなで手分けしてガリ版切りをした台本 上段の書き込みは演出ノート

 
照明は1kwのスポットライトが両サイドに2基。背景の明るさを操作するホリゾントライト。天井からのボーダーライト。それにフットライト程度。これらの照明機材は学校には無く、公演のつど電気屋さんからレンタルで借りていました。また、メイクはドーランと呼ぶ油性の泥絵の具状のものです。それを手の平でこね回して顔に塗りつけるため、皮膚の毛穴はすっかりふさがれてしまいます。その上汗だくで演技するのですから、にきび肌には極めて有害でした。

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●照明プランのメモ

 公演のハイライトは11月に行われる「市内高校演劇発表会」です。長岡駅前にある「長岡市公民館(厚生会館)」を会場として2日間にわたって行われるこの発表会では、例年、長岡高校(男子普通校)、第二長岡高校(女子普通校)、長岡農業、長岡商業、中越高校、長岡実業(女子高)の6校が参加していました。今日高校演劇は全国大会のコンペが脚光を浴びているようですが、当時はそのような全国的な仕組みは無く、あくまでも長岡市内の高校による合同発表会でした。普段他校の生徒といっしょになる機会がないだけに、終了後の合同反省会はとても貴重な交流の場となり、発表会の反省を離れて校内で起きている問題などに話が及ぶなど、しばしば脱線しました。 

●「夕鶴」「彦市ばなし」はアマチュア演劇定番中の定番
 
高校時代には学校の部活のほかに、地元に演劇好きが集まって作った「いろりの会」という劇団があり、そこにも参加していました。学校の部活から帰ると午後7時過ぎ。ちょうど夕食の時間です。いそいそと夕食を済ませるとすぐに「いろりの会」に出かけて行きます。仲間はみんな山本中学校時代に演劇熱心なM先生とI先生の薫陶を受けた人たちです。高校生になって学校が分かれても、あるいは就職して社会人になった人たちもいっしょに集まって演劇を続けていた訳です。

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●学校から帰ると夕食後はそのまま地元劇団「いろりの会」へ 1958冬の公演

 
演目としては菊池寛の「父帰る」、小山内薫の「息子」、木下順二の「夕鶴」「彦市ばなし」など、当時のアマチュア演劇の定番的な作品を採り上げていました。特に「夕鶴」は佐渡の民話「鶴女房」を題材にした作品とあって、新潟県では定番中の定番でした。稽古の場所は公民館、公演の場所は小学校のステージ。公演の時期は旧正月の1月15日前後。稽古場は深い雪の中、暖房といえば火鉢一つでしたが、みんなよくがんばったものだと思います。まさに「三度の飯より演劇が好き」という仲間の集まりでした。

 
1957(S32)年には青年団の音頭取りで、青年団の演劇部、いろりの会、それに小学校と中学校の演劇部も含めた発表会が行われました。いわば学校ぐるみ、地域を挙げての演劇公演が実現したわけです。夜中まで若い男女が集う演劇活動に、当初はいわれの無い批判が流れたこともありましたが、この演劇公演は町の人たちの演劇に対する意識を大きく変えたのではないかと思います。

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コメント 19

sig

チョコシナモンさん、こんにちは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-22 14:13) 

sig

ChinchikoPapaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-23 16:19) 

sig

yannさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-23 16:20) 

sig

corradoさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-23 16:20) 

sig

furukabaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-23 16:21) 

sig

八犬伝さん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-24 19:59) 

sig

くらいふさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-25 00:17) 

Qoo

文化祭って歴史ある行事だったんですね
学生時代、文化祭は大好きでした
僕はもっぱら体育館でバンドでしたよ
by Qoo (2008-08-26 06:40) 

sig

Qooさん、おはようございます。
学校行事の中でも文化祭は体育祭と並ぶ大きな行事ですよね。
こころとからだの両方がバランス良く育つための配慮からだと思います。
Qooさんは楽器をおやりですから、ベースで大活躍されていたんでしょうね。音楽もいいですね。ただし私はハーモニカしか出来ません。(笑)
by sig (2008-08-26 08:35) 

sig

銀猫さん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-26 19:52) 

sig

kemmさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-27 22:05) 

Qoo

ハーモニカ、大好きです
ベースやりながらハーモニカも練習した経験があります
ブルースハープですけどね
哀愁があって大好きです
by Qoo (2008-08-28 21:02) 

sig

Qooさん、こんばんは。
ブルース系でハーモニカに似た楽器を使うのですね。
ブルース、好きです。ソウルが大好きなんです。
ボサノヴァもラテンもアンデスの歌も好きだし、
いわゆる民俗音楽系が好きなんですね。
楽器は一つも出来ないくせに。(W)
by sig (2008-08-28 22:57) 

sig

甘党大王さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-08-28 22:58) 

みかっち

大切になさってるのですね。。。。
私もちゃんととっておけばよかったなぁ~
定番「夕鶴」、「たけくらべ」は中学で、高校では「高瀬舟」など、
文学作品は必ず通る道ですね~
でも、水戸黄門のパロディなんかも面白かったなぁ♪
by みかっち (2008-08-28 23:16) 

sig

こんばんは、みかっちさん。
「夕鶴」「たけくらべ」「高瀬舟」・・・どれも名作。いいですね。
この年頃にはぜひ接しておきたい文学作品ですね。
みかっちさんはいつも主役を張ってたんじゃないでしょうか。
水戸黄門のパロディみたいなものは、予餞会で演劇部以外の人たちが、楽しみながらめちゃめちゃ羽目を外してやってましたね。
当時の資料は、これまで何回も引越しをしたのに、なぜか捨てられませんでした。私の青春だから。(ちょっとキザかな)
by sig (2008-08-29 00:26) 

sig

puripuriさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-08-31 22:38) 

sig

Ja-Kou66さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-05 09:13) 

sig

kurakichiさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-10-05 11:07) 

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