一度はやってみたいアニメーション [「動画」の自分史]
「動画」の自分史―19
一度はやってみたいアニメーション
8ミリ映画事始め―3
●切り絵アニメ/平面の絵ではなく、多少立体感を出してみました。
あなたが初めてビデオカメラを買ったら、先ず何をしますか? 多分、いろいろな情景を試し撮りするのではないでしょうか。1962(S37)年の正月から始めたダブル8方式の「ヤシカ8Us」による私の8ミリ映画も同様に、まずテスト撮影からでした。
真っ先に「フェーディング」と呼ばれるもの。画面が次第に明るくなって始まり(フェードイン)、次第に暗くなって終わる(フェードアウト)という、映画のもっとも基本的な手法です。
次に「1コマ撮影(1コマ撮り、コマ撮り)」。これはメモモーションとも呼ばれるもので、時間を短縮して見せられるため、科学や自然現象などのドキュメンタリーなどに良く使われますが、ちょうど早朝、霜が降りたので、田んぼの霜が解けていく様子を撮りました。
この他テスト撮影には、やってみたくて手ぐすね引いていたアニメが含まれていました。なにしろ特殊な効果や動画を遊んでみたいばかりに、「普通の8ミリづくりではマニアックな機能は不要」と他社が切り捨てた高度な特撮機構を備えた「ヤシカ8Us」に決めたのですから。
●特殊撮影何でもOKの「ヤシカ8Us」
また、そのうち結婚して、子供たちが小学校にでも上がるようになったら、撮影速度を変える「スローモーション(高速度撮影)」や「ハイスピード(微速度撮影)」を使ったお遊びや、「フィルム巻き戻し機構」を使った「ディゾルヴ」「オーヴァーラップ」といった多重露光を応用したトリックなどにも挑戦して、子供たちを主役にした忍術映画や一人二役映画を作ってあげるんだ、などと考えていたのでした。
今、ビデオをお使いの方はここまで読まれてお気づきでしょうか。いろいろな画面づくりのほとんどが、撮影技法としてカメラ側に依存しているということなのです。ビデオなら編集段階でパソコン上で処理する作業が、8ミリ映画の場合はほとんど撮影段階に委ねられているということ。これが8ミリ映画(アナログ動画)とビデオ(デジタル動画)のいちばん大きな違いなのです。
ここから先の話は、現在ビデオをパソコンで編集(ノンリニア編集)されている方には、8ミリ映画というアナログメディアの編集がいかに勘に頼らなければならないものであったか、また時間と手間のかかるものだったのか、ということに驚かれるでしょう。
●フェードイン(溶明)、フェードアウト(溶暗)
フェードイン(溶明)は、まず絞り切り機構をクローズして光を通さない状態にしたあと、撮影開始と同時に少しずつ絞りリングを回して適正露出になったところで止めて撮影を続けます。これで溶明となります。溶暗はこの逆の操作です。
溶明、溶暗にかける時間の長さは、パソコン編集のようにきっかり1秒などというものではなく、勘で行います。
●中央の赤い数字のダイヤルが絞り。0が絞り切り。
撮影しながら適正露出の絞り数値まで回転させるとフェードインになる。
ちなみに「白フェード」。ひとつのシーンが真っ白から始まって継続し、最後は次第に真っ白になって終わるという表現ですが、これはフィルムではほとんど見受けられず、ビデオの時代から始まったようです。
現在、フェードを掛ける場合はパソコン上の編集ソフトで、1秒でも2秒でも、意図通りにきっかり指定できますね。
●1コマ撮り微速度撮影のテスト(動画参照)
8ミリカメラを買ったのは暮れだったので、早速正月の風景を撮影しました。ここでは1コマ撮りによる時間の短縮効果を試してみました。最後のカット、田んぼに降りた霜が太陽が昇るに連れて解けていく様子をご覧ください。
これはカメラの「1コマ撮り」用の接点にレリーズをつないで1コマずつ指で押して撮影したものです。寒風の中、カメラ脇に立ちっぱなしの手作業です。このダブル8の場合は1秒16コマの速度ですから、5秒間見せたい場合は80コマを必要とします。1分ごとに1コマずつ撮影することにした場合、5秒間の映像を撮影するのに80分も吹きさらしの中に立っていることになります。この場合はもっと長かったと思います。
●「ヤシカ8Us」 1コマ撮影は1と書かれたところにレリーズを指して撮影
このような特殊撮影は、現在のビデオではお茶の子さいさい。撮影はカメラを三脚に据えたら、あとは1分ごとに1コマのインターバル撮影をセットしてお任せ撮影。これでOKですね。
このように、今ではパソコン上でいとも簡単にやってのけられるテクニックを、8ミリ映画ではどんなに苦心して撮っていたことかと、技術の進展には驚くばかりです。
再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら
●8ミリ映画「お正月」冒頭24秒 最後のカットをお見逃しなく。
●1コマ撮りアニメのテスト(動画参照)
アニメのテストでは、プラモデルの戦車を使ったりしていろいろ試してみましたが、ここでは下記の3種を動画でご覧頂きます。
●プラモは真っ先に動かしてみたくなりますね。
右は砲弾を発射したところ。この頃からヘビースモーカーに向かってまっしぐら。
①「おもちゃのまち」
積み木とプラスチックの電車を使ったもの。
もっとも初歩的なアニメで、単純に積み木を増やしながら建物をかたちづくり、建物が完成後、その前を2両連結の電車が通り過ぎる、というもの。
②「おでかけスカンク」
瀬戸物の置物を使ったもの。
2匹の子供スカンクのあとから「急がないで、気をつけて」とお母さん。そんなことにはお構いなく、やんちゃ小僧は逆立ちして例の一発を、というストーリー。
置物自体は動かないので、子供と母親の歩き方や逆立ちにひと工夫。関節が動かせる人形をアニメートとしたものはマペットアニメと呼ばれます。
③「CMもどき・ポポンS」
「おいしいご馳走を食べたあとには,ポポンSをお忘れなく」という、コマーシャルの真似ごとです。
食堂のテーブルに冷蔵庫の中のあれこれを並べて動かしたもの。
①②と同じ1コマ撮りですが、例えば「味の素」に回転を加えるなど、動きをかなり細かくしています。こんなものでも一晩徹夜でした。
再生できない場合、ダウンロードは🎥こちら
アニメーションには、一般的な紙に書くもの、切り絵、影絵、粘土や針金などを使った立体的なもの、最近ではパソコンソフトで動かすもの、CGを使うものなど、アイディア次第で数え切れないほどの表現が可能です。たとえパソコンを使っても、その動きはアニメならではの魅力があります。 型にはまらないものがアニメーションの魅力だと言っても過言ではないでしょう。
ということで、「一度はやってみたいアニメーション」。でも、その苦労を考えると「何度もやりたくないアニメーション」、なのでした。
私も一コマ撮りが出来たら・・・アニメですね♪
中学生時代、よくパラパラマンガを教科書に書いておりました^^;A
でも、そんな便利なカメラがあったとは驚きですね(^^)
by kontenten (2008-11-17 11:01)
どれもとても面白かったです!
「お正月」の中のラストは、霜でしょうか?素晴らしいですね~
とても時間をかけて仕上げられたものだなぁと感心しました!
by みかっち (2008-11-17 18:10)
すばらしい!!8ミリカメラの黎明期といってはオーバーでしょうが、その頃にこのようなアニメを作られたとは・・・・・・現在のビデオカメラでもなかなか出来るものではありませんね。
by カメキチ (2008-11-18 10:16)
1コマづつ、見るのは一瞬ですが大変な手間ですね。
でも、苦労して作ったものは後で見るといいものですね。
by BlackTiger (2008-11-18 12:54)
kontentenさん、こんばんは。
kontentenさんも早くから「動く絵」「動く写真」に興味がおありだったようで、うれしいです。
スチルはスチルとして、ビデオをお始めになりませんか。眠っている才能をぜひ目覚めさせてください。猫ちゃんたちも喜びますよ、きっと。
by sig (2008-11-18 17:36)
ChinchikoPapaさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-18 17:37)
チョコシナモンさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-18 17:38)
みかっちさん、こんばんは。
20代の前半は、こんなことして遊んでたんですよ。無邪気なものでしょう。
「お正月」で写したのは、まさに初霜ですね。この年の初めに降りたのですから。(笑)
アニメはたくさんの時間を、集中的に一気に掛けなければなりませんから、いつでもできるものではないので、つい始めることを億劫にさせる理由でもありますね。
by sig (2008-11-18 19:46)
八犬伝さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-18 19:46)
カメキチさん。こんばんは。
なんにでも興味と好奇心を持つ性分でしょうか。映像への興味は「なぜ絵が動くのか」に発していますから、カメラを買うことはその目的のためでした。
ただ、ひと通りやってみて思った通りだったということを実証できれば気が済むので、同じことを何回もやるほどの凝り性ではないのです。ですから、アニメもほんのうわべだけをやってみただけで、長く続けた訳ではありません。
by sig (2008-11-18 19:53)
良い勉強に為りました。ビデオも8ミリ撮影の感覚を
頭に入れておくと良いですね。
by 吉之輔 (2008-11-18 19:57)
BlackTigerさん、こんばんは。
なんでもそうだと思うのですが、さらりと見てしまえるものほど、手がかかっているものではないかと思います。
アニメはその最たるものだと思います。
BlackTigerさんのようにそれを理解できる人は、すてきだと思います。
by sig (2008-11-18 19:58)
吉之輔さん、こんばんは。
仰るとおり、ビデオ撮影は映画の技法と全く同じです。
その映画は舞台をお手本にしているんです。
例えば、照明は「あかり」、人物のいない画面は「から舞台」、最初から人物を入れて撮るのは「板付き」。画面の左右は「下手、上手」、画面中央は「心」。
画面転換では「溶明、溶暗、暗転」をはじめ、画面をひっくり返して転換するのは「でんぐり」です。演技では、一区切り付いたときは「きまる」といいます。このあたりは日舞と同じではないでしょうか。この他たくさんの舞台用語が映画撮影の現場で飛び交っていますよ。
by sig (2008-11-18 20:20)
yannさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-19 09:44)
霜が溶けていく様は見事ですね~
あれを撮るだけでも苦労するんですね
アニメも面白いです
積み木のアニメはフェード効果もあって面白いです
昔この様な映像がTVでも結構あった様な気がします
by Qoo (2008-11-20 07:11)
Qooさん、こんにちは。
いまでは「霜」のような映像は、ビデオカメラ任せで簡単に撮れちゃいます。
ただアニメとなると、市販のビデオカメラでは映画のように1コマ撮りができません。コマ撮りができるといっても1秒2コマ程度ですから、スムースには動かせません。ですから、逆手にとって、そのぎごちない動きが生かせるアニメを考えればいいのですね。
by sig (2008-11-20 10:19)
映像2本を拝見しました。
特にコマ撮り映像の動きに何度も見直しました。
制作者の気持ちが込められていますね。
参考になりました。
by furukaba (2008-11-20 22:46)
furukabaさん、こんばんは。
これはテストとして撮ったものですから、安易なものです。
この数年後、本格的なマペットアニメを体験しました。ただ、真っ暗なスタジオに篭りきりの作業で健康上の不安を感じ、アニメーターの道を断念したという経緯があります。
コメント、ありがとうございました。
by sig (2008-11-21 23:39)
kemmさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-23 15:37)
Ja-Kou66さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-24 19:20)
ヨタ8改さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-11-29 00:37)