「新宿コマ劇場」よ、さようなら [時には「平成」]
時には平成―4
「新宿コマ劇場」よ、さようなら
「コマ東宝」で東宝映画「喜劇・駅前旅館」に再会
●12/21の新宿コマ劇場外観(上)と「コマ東宝」の入口(下左)と招待券(下中)
12月21日日曜日。年の瀬とは思えないほどの暖かな好天に恵まれて、出かけたところは郊外の公園にあらず、新宿は歌舞伎町。例の新聞購読者サービスで申し込んでおいた「新宿コマ東宝」のチケットが当たり、久しぶりの映画観覧に赴いたのでした。
「新宿コマ東宝」という映画館は名前の通り「新宿コマ劇場」の地下にあります。ご存知の通り「新宿コマ劇場」は今年限りで閉館。ということで大晦日までの間にいろいろな回顧企画が行われ、今回の「コマ東宝」の上映会もその一環で、20日「雪国」、21日「喜劇・駅前旅館」、22日「放浪記」と日替わり興行なのでした。
「雪国」「放浪記」の文芸作品を選ばずに「喜劇・駅前旅館」を選ぶのが私らしいところなのですが、これとても原作は井伏鱒二。監督も豊田四郎ですからただのおふざけ喜劇ではありません。本心を言うと、この映画は高校生時代に観たのですが、その後テレビで観た記憶が無く、これは見落とせないということで早速申し込んだのでした。集まったお客さんは予想通り私と同年輩かそれ以上。座席数約600の館内がほぼ満杯になるほどの盛況でした。
●入口を入ると「コマ東宝」と「シアター・アプル」に分かれます。
●左/入口を下から見た感じ 右/階段を降りたところにある喫茶
●左/売店 右/劇場の入口
●劇場入口3ヶ所
●定員586人の場内 椅子もきれいだし、まだ十分使えそう。
燦然と輝く東宝のマーク ~ メインタイトル、次いでキャストとスタッフを列記したクレジットタイトル ~ オープニングは上野駅前の大俯瞰。馴染み深い駅の建物がゆっくりと右にパンすると市電の通り。そして、出ました、私が高校3年に上京した時に8ミリで撮影した仁丹とパイロット万年筆の大きな広告塔。高いビルは全く見当たらず、駅前がなんと広々とのどかに広がっていることか。そこへ到着した数台のはとバスから歓声を上げながらあふれ出てくる修学旅行の高校生たち…これだけでもう十分。十分に胸が詰まりました。
★関連記事「初めての8ミリ映画、50年前の上野、有楽町」はいかが?
http://fcm.blog.so-net.ne.jp/archive/20080905
当たり前のことながら、主演の森繁久弥をはじめ登場人物の面々がみな若い。おきゃんな女子高生役の市原悦子。宿泊客サービスでギター抱えてロカビリーを演じるフランキー堺、お色気で番頭の森繁久弥を篭絡しようとする淡路恵子。板についた憎まれ役で旅館をおどす山茶花究(「三三が九」のもじり)。更には伴淳三郎、浪花千枝子、左卜全という懐かしい面々の意気軒昂なこと。
こうした俳優たちと再会できた懐かしさとともに私の興味の大方を占めたのは、テレビ時代が到来する直前の当時の街頭や家の中の様子です。この映画は撮影された時と同時代の物語であるため、セットにしても、旅館の玄関ホール、階段、帳場、客室、浴室などのたたずまいからそこに配置される古道具まで、特別に考証する必要は無かったと思われますが、そのリアルタイムの情景が50年後の今日に大きな意味をもつのだということです。
「映画はタイムカプセル」…フィルムというメディアに時間と空間を封じ込めたもの、それが映画…これは私の持論でもあるのですが、昔のままの風景(街頭、室内)、若いままの俳優たち、当時の習わしや言葉づかい(生活慣習)などがしっかり切り取られているこの「喜劇・駅前旅館」を観て、完全に昭和30年代にタイムスリップしている自分を感じていたのでした。
「新宿コマ東宝」は「新宿コマ劇場」の完成とともに1956年12月末に誕生した東宝映画のロードショー館で、「ゴジラ」をはじめ森繁久弥の「社長シリーズ」、「駅前シリーズ」、加山雄三の「若大将シリーズ」などで人気があったようですが、日本映画をあまり見ない私にはどちらかというとなじみの薄い映画館でした。むしろ隣りの「新宿東宝会館」内の洋画専門ロードショー劇場「新宿プラザ劇場」へ通いました。その「新宿東宝会館」もコマ劇場といっしょに再開発されるということです。
コマ劇場オープンから52年。半世紀を越えて生まれ変わろうとするこの場所に再び映画館が作られることと思いますが、その方式やシステムが21世紀の新しい映画のかたちを見せてくれるはずです。それが今からとても楽しみです。
古きを愛し、新しさを受け入れる。 ステキです。
52年の歴史の中で、ココでのワタシの思い出はほんの短い時間だったけど、刺激的な時間を過ごせたことに感謝です。
by うに (2008-12-23 11:55)
takemoviesさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-23 12:41)
xml_xslさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-23 12:41)
うにさん、こんにちは。
新宿駅周辺には10年前ころまではまだ戦後の名残りがあったのですが、三越(今は大塚家具)ができた頃になくなりましたね。
今度の歌舞伎町界隈の再開発もその意味ではさびしいですね。
でも、新しい街には期待が持てます。歌舞伎町のイメージを一新する明るい歓楽街になるのではないでしょうか。
by sig (2008-12-23 15:41)
新宿コマ名が消えてしまうのですね。
どのように変わっていくのか期待したい処です。
by furukaba (2008-12-23 15:54)
furukabaさん、こんにちは。
歌舞伎町全体に変化を及ぼすはずで、そこに期待しています。
by sig (2008-12-23 16:46)
sigさん こんばんは
映画や音楽はアルバムのようですね
見たり聴いたとたん その当時の事が戻ってきます
コマ劇場の映画館で映画を観たのは一度
何時も映画を観ていた東急文化会館は もうありません
by いぬ (2008-12-23 16:57)
とても素敵なタイムスリップをしてこられたのですね♪
『おきゃんな』市原さんの姿が絵に浮かびます~!
どんどんなくなっていく昭和の姿を嘆いてばかりではないところが、
sigさんのますますのワクワクのキーワードなのですね!!
by みかっち (2008-12-23 17:33)
いぬさん、こんばんは。
ほんとにその通り。まるでタイムマシンですよね。
歌謡曲や演歌にうとい私は「コマ劇場」で歌手の公演を見たことはないのです。「コマ東宝」での東宝映画の観覧もほとんどしていません。今回はただ「喜劇・駅前旅館」を見たさに行っただけなので、コマ劇場が無くなることに対する感傷などは書けないのです。その意味で根っからのコマ劇場ファンには、この記事の中身は羊頭狗肉だったかも知れません。
by sig (2008-12-23 17:39)
みかっちさん、こんばんは。
来年はおニューカメラの成果がとてもたのしみですよ。生きてて良かったー!
はいはい、賢明なみかっちさんはすでにお見通しの通り、私は決して懐古趣味じゃありません。「今の人は恵まれてる」、「昔は良かった」なんて、口が裂けても言いません。「昔は昔、今は今。今は昔の積み重ね・・」(あれ、ちょっといいじゃん、このフレーズ)そういう視点でこのブログを書いてま~す。今年もあとひと息ですね。風邪をひかないようにがんばりましょう。
by sig (2008-12-23 17:55)
駅前シリーズ懐かしいですね
コマ劇場もなくなるのですね。
幼少の事は、朧げなのに、sigさんは切り取ってきたみたいに、
はっきり、覚えてらっしゃるのですね。そこが凄い。
山茶花究はいい役者でしたね。
by OMOOMO (2008-12-23 19:14)
OMOOMOさん、こんばんは。
たまたま昨日(と今日は再放送)NHKでコマ劇場の番組がありましたね。そこで、最後のステージを務める北島三郎座長が言ってましたね、「まだ十分に使えるのにね」と名残惜しそうに。
私が新宿に遊びに出たりするようになったのは20歳過ぎてから。もう大人ですから、特別記憶がいい訳ではありません。でも、この流れで「歌声喫茶」や「ACB」のことを書きたいのですが、あまり覚えていないんですよ。困りました。(笑)
by sig (2008-12-23 21:18)
フイルムの映像はいいですね。
コマ劇場のあたりは学生時代遊びあるいた場所です。
by yann (2008-12-23 21:50)
チョコシナモンさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-23 22:05)
yannさん、こんばんは。niceありがとうございます。
yannさんの学生時代、歌舞伎町はいろいろな刺激を与えてくれたのでしょうね。
by sig (2008-12-23 22:09)
shinさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-23 23:44)
ChinchikoPapaさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-23 23:48)
こんにちは♪ご訪問、ありがとうござました。
「新宿コマ劇場」・・・北海道にいる私でも
もちろん耳にしたことはありますが
実際に行ったことはありません(泣)
私が生まれる前から、あったのですね~~~♪
by プリン (2008-12-24 10:53)
回り舞台がコマのように回るので【コマ劇場】って事
昨日のTV番組でしりました^^;Aアセアセ
ここにも、関西の大物・・・小林一三さんが関係していたのですね(w)
いやはや、驚きました。
by kontenten (2008-12-24 11:47)
プリンさん、こんにちは。
今日のお天気はいかがですか。
「新宿コマ劇場」は超が付く有名歌手のワンマンショーや大型ミュージカルで有名でした。
どこかにも書きましたが、私はほとんど入ったことはありませんが、家内は友達に誘われて、美空ひばり、小林幸子などの公演に行っています。
芸能も大衆の文化としてとらえれば、やはり月並みな言葉ですが、一つの時代が終わったといえるのではないでしょうか。
by sig (2008-12-24 11:48)
kontentenさん、こんにちは。
梅田コマ劇場との関連もありますし、レビューはやっぱり関西なんでしょうか。NHKの番組は録画はしたのですが、まだ見ていません(汗)
跡地の開発はきっと従来の歌舞伎町イメージを払拭したものになるのではないでしょうか。楽しみですね。
by sig (2008-12-24 13:24)
有名なコマ劇場、一度もいくことなく閉館ですか
淋しいかぎりです 東京にいるうちにいけば良かったです
メリークリスマス 素敵な一日をお過しくださいませ
by yamagatn (2008-12-24 17:38)
yamagatnさん、こんばんは。
私は地元なのに行っていません。昨日のNHKの番組で初めて内部を知りました。やはり1回は行くべきでしたね。特にミュージカルは見ておくべきでした。
後悔先に立たずですね。(笑)
コメント、ありがとうございました。
by sig (2008-12-24 21:50)
コマ劇は閉館になるのですね
高校時代に付き合った女性と一回行っただけですが
時代の流れなのでしょうか、寂しい気がしますね
by Qoo (2008-12-25 05:30)
"Happy Christmas"
よいクリスマスをお迎え下さい・・・♪
新宿コマといえば北島三郎さんが龍に乗って登場する
シーンを思い浮かべます~
演歌の聖地的な印象がありますねぇ
by mitsu (2008-12-25 16:31)
Qooさん、こんばんは。
ここで1回でも、思い出の青春のひと時があったのですね。
彼女も思い出しているかもしれませんね。
by sig (2008-12-25 23:30)
mitsuさん、こんばんは。たくさんのnice、ありがとうございま~す。
ああ、クリスマスもあと30分を切りましたが
Merry Christmas !
そうですね。でも、残念ながら私は演歌の聖地にとうとう1度も足を踏み入れずに終わりました。
けれどもコマ劇場が無くなるというだけで、郷愁を感じてしまいます。同じ時代を生きたからでしょうね。
by sig (2008-12-25 23:35)
corradoさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-27 23:27)
花火師さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-28 17:25)
kemmさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-30 11:14)
leoさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-12-31 22:18)
Ja-Kou66さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-01-02 09:23)