40年以上なら価値が出る [「動画」の自分史]
動画の自分史-24
40年以上なら価値が出る
●古い映画を集めて構成されたNHK「映像の戦後60年」のスタジオセット 2005
●ダブル8カメラを11年間も愛用
私が「ヤシカ8Us」というダブル8方式の8ミリカメラで8ミリ映画を始めたのは1961(S36)年。サラリーマンになって3年目の暮れでした。このカメラは1972(S47)年に次のシングル8方式のカメラを買うまで、なんと11年間も愛用していたのですが、その間、何を撮っていたのでしょうか。
買った時はまだ結婚していませんし、まして子供の成長記録を撮るために8ミリを始めたわけではないこと。そもそもが「写真を動かす映画のマジック」に興味があり、初めからカメラでいろいろなテクニックを使って遊んでみたかった、ということは前に述べました。
●W8の愛用機「ヤシカ8Us」
●W8の作品はモノクロ、サイレントで26本
今、手元にある「アート・プロダクション」(私が勝手につけたクレジット名)の作品リストを眺めてみますと、この11年間にダブル8(W8)で作った本数は26本となっています。決して多い本数ではありません。そしてそのうち21本が10分以内の小品です。この中には、コマ落とし(1秒8コマ撮影)、スローモーション(1秒32コマ)、二重撮影、フェード、オーバーラップ、2画面合成など、カメラでできるすべての機構を使ってアニメーションやトリック撮影の真似事をしたものがたくさんあります。
●W8時代のクレジットタイトル
そして、たった5本の長い作品の中に、前にご覧頂いた未完のドキュメンタリー「川崎」があります。あとの4本はカメラを買って3年後の新婚旅行、そして3人の子供たちをそれぞれ誕生から2才頃まで追ってまとめた成長記録です。
作品数が少ないのは、ひとえに休日が少なくて撮影している暇が無かったこと、それにフィルムの値段が高くておいそれと買えなかったことに起因しています。そんな理由から、新婚旅行だけは奮発してカラーフィルムを使いましたが、他は全部モノクロです。それほどカラーの8ミリ映画は高価だったのです。また、音声は全部サイレント(無音)です。カラーにしても音声にしても、今のビデオと比べると隔世の感がします。
●撮影しても1年間はお蔵入りだった
8ミリ映画を楽しむにはカメラと映写機の両方が必要です。けれどもフィルムを買うのもままならない状況では、両方をいっしょに揃えるということはとうてい無理でした。そこで、まずカメラを買って、先に撮影だけ済ませておいて、後から映写機を買うことにしました。
(今で言えば、とりあえずハイビジョンカメラで撮っておいて、その編集環境を満たす高性能パソコンを導入するのは後回し、というのに似ています)
それまではせっかく撮ったフィルムを見ることができませんが仕方ありません。現像が上がってくるとフィルムを透かして眺めるのですが、小さい画面でも自分が撮ったものですから分かります。とりあえず編集機(エディター)を購入すれば、手回しで小さい画面を覗くことができるのですが、1年後に映写機を買うことに決めて、編集機はがまんし、虫眼鏡(ルーペ)で確認したりしていました。
●カメラの1年後に購入したW8映写機「セコニック80P」
こうしてカメラを買った翌年に映写機(「セコニック80P」)を購入するまでの1年間、私の8ミリ映画は日の目を見ずにいたのでした。つくづくお金のない者がのめり込む趣味ではないと痛感しました。(と言いながら、懲りずに今もビデオにのめり込んでいるのですが)
●その8ミリフィルムが45年後によみがえった
ところで、私が初めて、借りた8ミリカメラで上野、有楽町、銀座を撮った「試作フィルム」から50年経ちます。
http://fcm.blog.so-net.ne.jp/2008-09-03
当然、フィルムの劣化は気になっていて、自分としては保管には気を配ってきたつもりです。お茶屋さんが新茶を入れて売っている桐の茶箱が湿気を防ぐのでいちばん、と聞いたことがありますが、私の場合は和菓子やクッキーの缶にフィルムを入れ、菓子箱に入っている吸湿材や乾燥剤をいっしょに入れてしまっておきました。時々は様子を見ていたのですが、ある日、昔のフィルムを徹底的に検証しなければならない機会がやってきました。
●お菓子の空き缶に乾燥剤といっしょにフィルムを入れ、ビニールテープで目張り
2004(H16)年秋にNHK衛星放送で、市民が所蔵している昔の小型映画を基にして「あなたと作る時代の記録-映像の戦後60年」という特別番組を制作するということでフィルムの募集が始まりました。それが、昔の8ミリ映画を取り出してみる機会となったのですが、何年ぶりかでお菓子の缶を開けてみますと、瞬間、酸っぱい臭いが鼻を突きました。あっ、来るものが来た!という感じでした。「ビネガー・シンドローム(酢酸症候群)」と呼ばれるフィルムの劣化です。いつかは訪れるものと覚悟はしていましたが、まだ大丈夫と高をくくって油断していたのですが、長短26本のダブル8フィルムの半分以上に劣化の兆候が見られ、うち数本は完全に上映不能の状態になっていました。それでもそれ程あわてないで済んだのは、こうなることを想定して、その5年ほど前に自分で「簡易テレシネ」を行っていたからでした。
●滅びる前に価値を残そう
テレシネとは本来専門の装置を使って、上映している映画をもう1台のカメラでそのまま撮影することを言うのですが、自分でやる場合は映写機の隣りにビデオカメラを並べて画面がフレームいっぱいになるようにセットし、スクリーンに映った画面をそのままビデオカメラで撮影するわけです。
ポイントは必ず、オートではなくマニュアルで、スクリーンにしっかりピントを合わせて固定すること。露出が画面の明るさの変化に影響されないように、これもマニュアルでセットしておく。この2点が肝心なことなのですが、複写による複製ですから、当然オリジナルと同じというわけには行きません。あくまでも気休めにコピーを取っておく、全滅させてしまうよりはまし、というレベルの話です。私の場合はS-VHSの時代にそれをやっていたので、NHKにはそのテープで8ミリ映画の映像を提供することができました。
●NHK衛星放送「映像の戦後60年」の収録スナップ 2004
司会は宮本隆治さんと中山エミリさん(NHK HPより)
NHK衛星放送「映像の戦後60年」は2005(H17)年1月から12月まで1年間にわたって放送されましたが、番組制作のために私も取材を受けた他、3度ほどNHKのスタジオに出向きました。子供たちにも取材が及んで戸惑っていたようです。その時から41年前に撮った私の8ミリ映画の一部はテレビ放送されたあと、川口市にある「NHKアーカイブス」に所蔵されています。
●全4巻のDVDになって、私の映像が採用されている2巻だけ頂戴しました
●「NHKアーカイブス」 私の8ミリ映画も殿堂入り!
ワインは年代物ほど価値が高まります。8ミリは逆に年代を経ると滅びてしまうのです。でもそこに写された映像の価値は確実に高まっています。それを滅亡させてしまわないために、保存する努力をする必要があります。
次回はビネガー・シンドロームについて少し詳しくお話しましょう。
■古い8ミリ映画をお持ちの方は…
まだフィルムが映写機に掛かるうちに、本格的なテレシネによってビデオ、ディスクなどに保存し直されることをお勧めします。「レトロ通販」は知る人ぞ知る8ミリ映画の専門店で、当初からフィルムの劣化対策に取り組み、上記NHK「映像の戦後60年」でも同社の高画質8ミリ変換方式が使用されました。
「(有)レトロエンタープライズ」レトロ通販事業部
〒130-0014 東京都墨田区亀沢4-12-9
TEL 03-3829-2776 FAX 03-3829-2780
http://film.club.ne.jp/service/telecine.html
NHKの番組に採用されたって凄いことじゃないですか!!!
by とも (2009-02-16 00:35)
ともさん、いつもありがとう。
短い時間ながらインタビューで番組に登場もしました。
スタジオは全国からフィルムを寄せた人たちが集まり、いっぱいでした。
by sig (2009-02-16 00:53)
30年前の8ミリが1本あります。
1度も見たことなく、管理状態も悪く、本箱の引き出しにありますが、
ご紹介のレトロ通販に送ると、又見れるということですか?
試しにしてみなくちゃね!(*^_^*)
by ami (2009-02-16 00:57)
amiさん、こんばんは。
次回に8ミリフィルムの劣化について詳しく書く予定ですが、30年前ならまだ大丈夫だと思いますが、臭いをかいで酢酸の酸っぱい臭いがするようですと急がなくてはなりません。
レトロ通販にフィルムの様子をお電話されると相談にのってくれると思います。このブログに乗せることを話してありますから。
by sig (2009-02-16 01:08)
チョコシナモンさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 01:08)
furukabaさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 01:09)
猫屋福助(株)さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 08:41)
kakashisannpoさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 12:52)
Nyandamさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 12:54)
gyaroさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 12:55)
フィルムって、湿気があったらカビるし
乾燥しすぎてもぱりぱりになっちゃうし
手のかかる子ですね(^ ^;
家のは、Hi8です。早くHDに移したいのですが
なにしろハンディカム本体が動くかが不安。。
・・・NHK・・・!すごいですね!
by Ja-Kou66 (2009-02-16 13:30)
Ja-Kou66さん、こんにちは。
Hi8のテープはもちろんまだ大丈夫ですが、送り出すカメラの方がね。うちのHi8カメラはとっくに×になりましたし、デッキもきゃしゃで、頼りないのです。
いずれにしてもHi8のアナログ映像はデジタルにしておいた方がいいですね。自身を含めて。
NHKは永くやっていれば誰でもその機会は生まれますよ。
by sig (2009-02-16 15:19)
吉之輔さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 15:19)
takemoviesさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 15:20)
shinさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 15:20)
mitsuさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 15:21)
プリンさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 15:22)
ChinchikoPapaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 16:34)
ヨタ8さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 17:15)
xml_xslさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-16 20:42)
やっぱり残す価値はあるのですね!!
素晴らしい功績です!
今は技術が進んでるからこそ、大切な今をどんどん切り捨てて、
編集してしまいがちだと思うんです。特に個人の映像は。
あれこれ出来なかった時代だったからこそ、隅々まで、
ありのままの昭和がそこに焼き付いていたのですね!
by みかっち (2009-02-16 21:42)
最初のスタジオのセットが時代をあらわしてていいですね、
やはり、ふつーの人ではなかったのですね。NHKに資料提供だなんて。
一部屋資料で埋まっているのですか?一部屋じゃすまないね。
いつも、感嘆してしまいます。凡人じゃない。
by OMOOMO (2009-02-16 22:30)
やはり、情報の長時間保存って難しいのですね^^;Aアセアセ
フロッピーディスクやハードディスク等も磁気記録ですので
劣化が否めませんし、CD-R等も紫外線に侵されます(><)
DVDやCDも表層の樹脂が・・・
40年、よく保存されました(^^)
by kontenten (2009-02-16 22:38)
子供の頃に家の壁に映したものを見た思い出があります
自分が子供だった頃を撮影したものでしたが、保管もお菓子の入れ物に入れただけだったので今ではもう見られなくなっているのかも知れませんね
でも、部屋を暗くして壁に映して家族で見たという思い出はちゃんと心の中に残っています^^
by walz (2009-02-16 22:38)
みかっちさん、こんばんは。
タイトルをもう一度。
人間も本当の価値がでてくるのは40年以上経ってからだと思います。W
それは蓄積ということですから、仰るとおり切り捨ててばかりはいけないのでしょうね。
私の場合は切り捨てるどころか、いつか使えるんじゃないか、もったいなくて捨てられない、という癖が染み付いたままだということなんです。
by sig (2009-02-16 22:48)
OMOOMOさん、こんばんは。
上にも書きましたが、物を捨てられない性癖が残した8ミリ映画が、たまたま意図に合ったテレビ番組で使っていただけたというだけの話です。
部屋にあるのは資料というよりガラクタです。他の人には何の価値もないものが整理もせずにたくさん置いてあります。1本のブログを書くのに写真にするものをあちこち探し回るのが大変です。そんな普通のおじさんです。
by sig (2009-02-16 22:55)
kontentenさん、こんばんは。
そうなんですよ、新しいメディアが次々と生まれ、その都度切り替えていかないと元も子もなくしてしまいそうですね。
8ミリの時代はアナログですから、今のように簡単に、低い経費でコピーを作ることができませんでした。
デジタルで記録されたものをデジタルで移行させるのはいいのですが、アナログデータをデジタルに変換しなければならないのが、8ミリ映像保存の泣き所です。
by sig (2009-02-16 23:01)
walzさん、こんばんは。
それは8ミリ映画でしょうか。8ミリ映画には「W8」と「スーパー8」「シングル8」という規格があって、「W8」は劣化していると思いますが、他の規格ならまだ大丈夫だと思います。一度お父さんに聞いてみられたらいいですよ。フィルムの劣化が進まないうちにデジタル画像に変換すれば、思い出のシーンがテレビやパソコンによみがえりますよ。
by sig (2009-02-16 23:10)
yannさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
順番間違えてごめんなさい。
by sig (2009-02-16 23:11)
クレジットタイトルいいですね!
字体もかわいくて、おしゃれです(´▽`*)
sigさんの記録した歴史が放送されて、DVDとなって
後世へと語り継がれていくんですね。
とても素晴らしいことです!
by あい (2009-02-16 23:25)
あいさん、こんにちは。
昔、8ミリ映画では、こんなことをして遊んでいました。
放送されたことはそんなに大げさなことではないのですが、蓄積したものが日の目を見たというのがうれしかったです。
そういう意味で、今もビデオで自分の街の変化を記録しています。
by sig (2009-02-17 09:21)
やまがたんさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-17 09:21)
漢さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-17 14:08)
試作フィルム、今拝見しました。
すごい… 銀座4丁目交差点、今では想像も出来ない景色…
この映像が残っていることは、素晴らしいことですね。
今も昔も、たくさんの人が歩いている街なんですね。
by うに (2009-02-17 18:59)
うにさん、こんばんは。
わざわざ前のページを見てくださったんですね。ありがとうございます。
日劇は今はありませんし、まだGIさんが歩いていました。
銀座4丁目の大規模なネオン塔が珍しかったです。
コメントありがとうございました。
by sig (2009-02-17 20:07)
NHKアーカイブスにあるのですね!素晴らしい。
by アヨアン・イゴカー (2009-02-19 10:15)
八犬伝さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-19 12:37)
アヨアン・イゴカーさん、ありがとうございます。
しまってあるだけでは用をなさないのですが、いつかまた利用していただけることを願っています。
by sig (2009-02-19 12:38)
leoさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-19 14:36)
すごい!
sigさんの映像が永遠に残ることになったのですよね
これってメチャメチャ凄いですよ
なんだか僕まで嬉しくなります(^^)
by Qoo (2009-02-20 18:14)
Qooさん、こんばんは。
そんな大げさなことではないんだって。
でも、喜んでいただけてうれしいです。
by sig (2009-02-20 21:10)
kemmさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2009-02-22 17:48)