ディゾルヴして消えたもの、現れたもの [小型映画ミニミニ博物館]
小型映画ミニミニ博物館-17
ディゾルブして消えたもの、現れたもの
CHINON 60RXL DIRECT SOUND
●CHINON 60RXL DIRECT SOUND ●「昭和館」枝垂れ梅
●ビデオの時代は1970年代半ばから始まった
8ミリ映画がサウンド化を実現して最盛期を迎えた時、実は一方では別の大きな動きが始まっていました。ホームビデオの台頭です。エレクトロニクスの技術をホームユースへと着々と進められていた研究成果が、パソコンと並ぶ趣味の道具としてついに家庭にまで及んできたのです。
ビデオはカメラに関しては光学的な技術を必要としますが、記録・再生の技術は電子的なもので、それまでのカメラメーカーのノウハウには無いものでした。
守備範囲を脅かすものとしてカメラメーカーがビデオの台頭を食い止めるには、折角軌道に乗ったサウンド8ミリ映画を、ぜひとも家庭の隅々にまで広げる必要がありました。8ミリ映画が一斉にサウンド方式を売り出したのは決して偶然ではなく、実はビデオに対抗する必要があったからなのでした。
●開発メーカーの意地を見せた「フジカZC1000」
特に富士写真フイルムが、シングル8開発メーカーの誇りと威信を掛けて、技術の粋を結集して1975年2月に発表した「フジカシングル-8・ZC1000」。
それは、これ以上のものは考えられないというくらいに高度なもので、8ミリカメラで唯一レンズ交換可能、プロ仕様の16ミリムービーカメラをもしのぐマニア垂涎の最高級機として、今でも映画を学ぶ人たちの間で愛用されているようです。
■フジカシングル-8・ZC1000の主な仕様
メーカー 富士写真フイルム
発売年度 1975(S50)
レンズ フジノン F1.8 f=7.5~75mm 10倍ズームを標準装備
撮影スピード 1 12 18 24 36 72コマ/sec
絞り TTL測光 2倍・4倍露光可能
フィルム感度 ASA25 50 100 200 400 オートセット
録 音 テープコントロールコードによるスタート同時録音
電 源 単三4本
重 量 2.26kg グリップとも
標準価格 258,000円
さて、終焉に向かう8ミリ映画。ビデオとの確執の中で、8ミリ映画のリーダーシップをとっていたコダックと富士写真フイルムは最後までカメラ、映写機、そしてフィルムの提供を続けていました。
しかし、一般のカメラメーカーは、順次8ミリカメラの製造を中止しました。その中で、カメラと映写機を主体に製造していたベル・ハウェル、エルモ、サンキョウ、ヤシカ、チノンといったメーカーは最後まで機材を提供し続けていました。
●スーパー8でできなかったことを可能にしたカメラ
今回ご紹介する「CHINON 60RXL」の発売は1983年。8ミリ映画の時代がまさに終わろうとしている頃に発売されたカメラです。
このカメラはご覧の通り、一目見ただけで高級機の簡易版だと分かります。そり代わりセールスポイントをたった一つ、オーヴァーラップができる、ということに絞り込んだカメラなのです。
もちろん同時録音ができるだけでなく、音声もオーヴァーラップできるというところが大きな特徴です。
●上部左の丸いのがOLレバー オーヴァーラップの際1秒ほど押し下げると4秒間でフェードアウトしたあと、自動的に巻き戻される。
次のカットを撮影するときはその部分にダブって自動的にフェードインするため、現像すると二重露光でディゾルヴ効果が現れる。
初心者の頃は、フィルムの現像上がりを待ってそのまま映写機に掛けて楽しんでいた人たちも、8ミリ歴が長くなると映画らしい表現をしてみたくなります。そのテクニックの代表的なものがオーヴァーラップ、……前の画面が消えながら次の画面が現れてくるという手法ですが、スーパー8ではフィルムマガジンの構造上、それができなかったのです。
反対にそれはシングル8機の差別化ポイントでもあったわけですが、この「CHINON 60RXL」の登場によって、スーパー8の表現派ユーザーの要望も満たされることになった訳です。
●CHINON 60RXL DIRECT SOUND
■スーパー8 サウンドカメラ
CHINON 60RXL DIRECT SOUND 仕様
メーカー チノン
発売年度 1983(S58)
形 式 スーパー8 磁気サウンド同時録音方式
レンズ F1.2 f=7~42mm 6倍ズーム
撮影スピード 18コマ/secのみ
絞り TTL完全自動絞り 逆光補正
オーヴァーラップ 画と音・約72コマ(4秒)50ftコダックマガジンのみ可能
電 源 単三4本 6V
重 量 1.1kg
価 格 ?
●8ミリ映画の終焉
8ミリ映画は、カメラ生産台数がもっとも多かったのが1977年。この年161万台をピークにその後急激に減少します。
ビデオの時代を迎えて、カメラメーカーの代わりに台頭してきたのは電子機器メーカーでした。ホームビデオの記録メディアは1/2インチ幅の磁気テープ。ソニーがベータマックス方式のビデオ機材を発売したのが1975年。翌年、日本ビクターがVHS方式を発売。最初はアカイ、フナイといった中堅メーカーが加わりましたが、まもなく松下電器(パナソニック)を初めとする家電メーカーが揃い踏みとなります。
●初期のビデオはカメラとレコーダーが別。
ベータマックスとVHSの2方式で、最初はどちらもモノクロ。
当然ながら撮影と同時に完全同調の同時録音ができる
1978年、日本ビクターは日本航空の協賛を得て「第1回東京ビデオフェスティバル」の作品募集を開始します。時代はいつの間にか、透かせば画面が見えるフィルムという写真記録メディアから、透かして見ることのできない磁気テープという電子記録メディアの時代に移行していたのでした。
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●・・・そして、このごろでは
それから更に30年。今はそれも昔の話になりました。テープを使用する時代もすでに過ぎ去り、今のビデオカメラはすべてデジタルメディア(HDDやメモリーカードなど)に記録する時代に到達したのです。
おっと、ビデオカメラに限らずデジカメやデジイチでもハイビジョン画質のくっきり動画を撮影することができるようになりましたね。
それによってビデオの概念も変わり、動画の楽しみ方、応用の場面も増えました。これからが楽しみですね。
チノンって長野県の茅野にあった会社ですよね^^;Aアセアセ
両親が長野県出身の師匠(会社の部長)の話しですと・・・
創業された方も茅野さんだったそうです(^^)。
by kontenten (2010-02-13 09:34)
xml_xslさん
MO16Ruggermanさん
トメサン
c_yuhkiさん
Qooさん
kurakichiさん
SILENTさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 15:38)
kontentenさん、こんにちは。
それは知りませんでした。
長野県は昔から精密機械の技術ではピカ一でしたね。カメラを筆頭に時計、オルゴールなど。
私の8ミリ映写機の1台は三協で、たしか長野だったと思いますが。
by sig (2010-02-13 15:41)
ほりけんさん
lamerさん
YAOJIMAさん
くまらさん
Arielさん
お茶屋さん
アヨアン・イゴカーさん
takemoviesさん
fuzzyさん
yutakamiさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 15:44)
私はベータ派でした
先日実家の片付けで多くを廃棄しました・・・・・・
by pace (2010-02-13 16:48)
スチルカメラだけで動画は全く経験がありません。しかし、進歩しましたね。
by SilverMac (2010-02-13 17:36)
私が、初めて触ったビデオカメラは…このあとくらいでしょうか?
SONYのVideo Hi8 Handycam ~ちいさいカメラでした。
(※もう、使っていませんが~実家にありました)
by abika (2010-02-13 18:31)
オーヴァーラップって、エフェクトみたいなものでしょうか?すみません違うかも。
ビデオカメラを買ったのは昭和59年でパナソニック。あの方のようにカメラを持ち
肩からはデッキを提げて。今は押入れの中で眠っています。
by puripuri (2010-02-13 20:23)
メタッピーさん、はじめまして。こんばんは。
ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 20:46)
paceさん、こんばんは。
私もそうでした。最後のデッキは4年前の引越しで壊れてしまったため、多くのテープを処分しました。そのあたりは次の記事で。
by sig (2010-02-13 20:48)
タケルさん、はじめまして、こんばんは。
ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 20:52)
SilverMacさん、こんばんは。
今はスチルカメラでも動画が撮れる時代ですから、ぜひお手持ちのカメラで動画を遊んでみてください。
ここに書いたような煩雑さを全く感じないで楽しめると思いますよ。
by sig (2010-02-13 20:55)
麻里圭子さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
麻里さんはもっぱら撮られる側でしたね。
by sig (2010-02-13 20:56)
abikaさん、こんばんは。
8ミリビデオの前にテープ幅1/2インチという時代があります。
そのあたりは簡単に次回にでも。
いつもコメント、ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 20:58)
りぼんさん
toshiroさん
こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 20:59)
puripuriさん、こんばんは。
ディゾルヴは、前の画面が消えながら次の画面が現れる画面転換の手法です。
オーヴァーラップは同様のやり方ですが、多重露光で1カットを構成するものを言います。両方が混同して使われることが多いです。
昭和59年といえばまさにこの肩掛けタイプのビデオのはじめの頃です。
よほど映像づくりがお好きだったようですね。
by sig (2010-02-13 21:07)
disneyworldさん
kakashisannpoさん
こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-13 21:08)
マイクがつき出しているのがとてもプロっぽくて憧れでした~
いまでもプロ用のは基本の形は同じなんですよね(^_^)
by tomickey (2010-02-13 21:15)
tomickeyさん、こんばんは。
やっぱり興味をお持ちだったようですね。
フェラーリの走りをビデオで撮ったら、かっこいいだろうなあ。
by sig (2010-02-13 21:46)
おお、懐かしいお話をありがとうございます。
私も最初はビクターのポータブル、そして、
ベータを追加。2台使っていました。そして
その前はシングル8。映写機はなくて、エディ
ターで見ていました。ああああ、懐かしい!!
感謝。
もっとも、いずれの物も今はもうありません。
最近、VHS-Cのカメラをばらして捨てたばか
りです。あのバックトゥザフューチュアで出て
きたやつです。
by kjisland (2010-02-13 23:46)
レンズ交換が出来るというのが凄いですね。
今では一眼レフでも動画が撮れる時代ですが
ビデオの歴史は面白いです。
by 響 (2010-02-14 09:52)
ジンNDR114さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-14 13:04)
めえさんこんにちは。はじめまして。
ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-14 13:05)
kjislandさん、こんにちは。
kjislandさんも8ミリ映画からでしたか。古いですね。
その頃からやっている人は大抵、パソコンを使う現在のデジタルビデオの編集を上手にこなすことができるんですよね。
kjislandさんも海外取材のビデオをそのようにまとめておられるのではないでしょうか。
VHS-Cカセット、ありましたね。多分思案の果てに処分されたのでしょうね。わかります。次回、そのあたりについて、少し触れようと思います。
コメント、ありがとうございました。
by sig (2010-02-14 13:13)
sanaさん
soneさん
m6824さん
genpachiさん
SORIさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-14 13:15)
響さん、こんにちは。
ビデオの歴史、じゃなくて、ここまではまだその前の8ミリ映画の歴史ね。W 次回にビデオについて少々触れるつもりです。
でも、8ミリ映画の歴史を見ていただいてうれしいです。
このレンズ交換できる8ミリカメラは本体258000円ですから、とても手が出ませんでした。これは完全にビデオが登場することに対する牽制球として市場投入されたものですね。
フィルムによる映画制作を学ぶ現在の若い人たちにとっても、今なお憧れの機種なのです。
by sig (2010-02-14 13:22)
ぼんぼちぼちぼちさん
月夜さん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-14 13:22)
OMOOMOさん
トロッコさん
プリンさん
八犬伝さん
furukabaさん
yannさん
こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-14 22:11)
動画を撮る機会も増やせていけたらなと思います☆
問題は編集ですが^^;
先日、「横木安良夫流スナップショット」という本を読んだのですが、
そこには写真の歴史についても書かれていたのですが、
sigさんの記事の内容の方が俄然詳しく書かれていて、
あらためてリスペクトでございました♪
by gyaro (2010-02-15 00:43)
それにしても、オーバーラップの仕組みや操作は、
二重露光なんですね~♪
はじめて知りました^^;
by gyaro (2010-02-15 00:45)
チョコシナモンさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-15 01:16)
gyaroさん、こんばんは。
ぐんぐん写真の腕が上がっているので驚いています。カメラのせいって大きいですね。あは。いや、ほんとに、ずいぶんやる気が伝わってきますもの。動画はミュージック・クリップのようなものがgyaroさんのセンスに合っていそうな気がする。
写真関係のその本は知りませんが、お褒めの言葉頂戴しておきます。ありがとう。
オーバーラップはパソコン編集なら二重といわず何重でも可能です。イメージ表現には欠かせませんね。
by sig (2010-02-15 01:27)
miyokoさん
はっこうさん
キクさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-15 10:31)
AKAIは親が買った最末期のカセットデッキを使いました。
3ヘッドのもので、CDの音を録音しながら録音されたものを同時に聴けるタイプ。懐かしいですね。
by corrado (2010-02-15 12:31)
shinさん
釣られクマさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-15 17:19)
corradoさん、こんにちは。
AKAIはいいメーカーでしたね。AKAIを持つことがステータスという時期も売りましたよね。
私はオープンリールのテレコが欲しかったんですよ。カセットの少し前ですからね。
この会社、今はどうなったんでしょう。
by sig (2010-02-15 17:22)
chinchikoPapaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-15 17:24)
>透かせば画面が見える・・・
確かにそうですね。フィルムの良さです。
デジタルになってから、目に見えない、手に取れないモノが多くなりすぎて・・・(>_<)
それでもパソコンさえあれば、編集も楽♪手軽に楽しめる時代になりました。
by 路渡カッパ (2010-02-15 22:33)
flutistさん
maicatさん
majoramuさん
こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-16 00:16)
路渡カッパさん、こんばんは。
アナログの良さもすっかり影を潜めてしまいましたね。
アバウトの感じも人間っぽくて良かったですね。
仰るとおり、ビデオの編集はフィルムの時と比べて格段にやり易くなりましたね。けれども、最近のようにハイビジョン画質で編集するには、最高峰のパソコンか、編集に特化させた手作りマシンでないと対応できなくなりました。
by sig (2010-02-16 00:23)
あら!みてたのねさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-16 00:23)
お早うさんです。私は8㎜は使ったこと無いのですが、
オーデオには凝ってましたね。当時のカセットデッキ
スリーヘッドを使ってましたね。結構高かったのを覚えてます。
従兄弟は8㎜使ってましたが、こんな立派な物では無かったです。
ご訪問&ナイス有り難う。今後ともよろしくお願いします。
by 吉之輔 (2010-02-16 10:27)
PAPAさん
makiさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-16 13:57)
吉之輔さん、こんにちは。
80年代前後はオーディオブームでしたね。
この頃からでしょうか、機器が高性能になったせいで、吉之輔さんのような耳の肥えた人たちが本格的な音質を追求し始めるんですね。
by sig (2010-02-16 14:00)
わかって建築家さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-16 14:00)
こんばんは。カメラのことは分からないので、置いといて・・・
紅梅、ロウバイが美しいですね〜 (^。^)
by yakko (2010-02-16 22:41)
高校の文化祭で映画を作るのが流行ったことを思い出しました。
70年代の末頃なので8ミリ映画でしたね。
私はそういう知識も技術もなく完全な裏方でしたが。^^;
フジカ シングル-8は当時の傑作だったのですね。
by BlackTiger (2010-02-16 23:48)
うにさん
甘党大王さん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-17 14:45)
yakkoさん、こんにちは。
日本がいつの間にかアナログの社会からデジタルの社会に移りかけた頃の話を、「趣味の動画」という観点から書いています。
庭のロウバイは満開を過ぎ、今からはクリスマスローズの時期になります。
by sig (2010-02-17 14:49)
BlackTigerさん、こんにちは。
当時の8ミリ映画は富士フイルム系ではフジカシングル8が代表格。
スーパー8系ではコダック、エルモ、ニコン、キャノン、ミノルタなど、カメラ系は全部スーパー方式でした。
ピケくん、グレオくんをぜひ動画で見たいと思いますが、デジカメ動画でいいのですが、いかがでしょうか。
by sig (2010-02-17 15:04)
Ja-Kou66さん
artfuldodgerさん
こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-19 13:34)
みかっちさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2010-02-19 23:39)
sigさんご自身は今も動画撮影を楽しまれていらっしゃるのですか?
例えば1分でこの商品を! という時の基本的なCMの流れを実録解説付きで教えてもらえたらとっても嬉しいなぁ…なんてリクエストしてみたりして(笑)。
by うさ (2010-03-21 20:25)
うささん、こんばんは。
今はCMの仕事からは離れていますが、趣味はビデオですから、いつも動画を遊んでいますよ。お話、よろこんで・・・でも、どうすれば?
あ、うささんを「お気に入りリスト」に入れてなかったから、とりあえず、そうさせてくださいね。
by sig (2010-03-22 02:30)