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なら、何を撮る?シネマスコープ
映画づくりの楽しみが、みんなの手に
 

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●「ヤシカ8 T2」のみが可能にした、画面縦横比1:2のシネスコ映画上映イメージ写真


 こんにちは。「昭和館」館長兼、当「ミニミニ博物館」の学芸員でもありますsigです。この「小型映画ミニミニ博物館」は、およそ30年ほど前に姿を消してしまった「8ミリ映画」についてのコーナーです。
 
さて、カメラ業界におけるメーカーの浮き沈みは今に始まったことではありませんが、今日ご紹介するカメラのメーカーも、悲しいことに現在は存在しておりません。
 ヤシカという名前を聞いてすぐに思い出していただけた
方は、もう悠々自適のご年配。昔鳴らした8ミリマニア、あるいは大ベテランということになると思います。
 
●8ミリの初期、W8の名機「ヤシカ8 T2」
 ヤシカは198310月に京セラに吸収合併されるまでは、長野県諏訪市の精密機械生産に最適な環境の中で、8ミリ撮影機(カメラ)や映写機をはじめスチルカメラにおいても数々の名機を生み出しておりました。私の印象では、機能が豊富で良質の割には価格がリーズナブル。そして何よりも、ユーザーが欲しがる機能をよく理解した製品づくりをしていたという意味で、親近感を抱ける会社でした。

 
そこで今回お話したいのは、「ヤシカ8 T2」というダブルエイト・カメラです。
 ダブルエイト
(W)というのは前回お話しましたように、16ミリフィルムを片側ずつ往復撮影する方式ですね。このカメラの発売は1957(S32)年で、この年は「神武景気」という言葉で言い表されるように、とても景気が良かった年でした。テレビはまだ白黒でしたが、「名犬ラッシー」「ヒッチコック劇場」「アイ・ラブ・ルーシー」などが大人気で、人々の映像に対する欲求の高まりが8ミリ人気の後押しをしてくれた時代でした。 

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●上左/持ち替える必要なく連続的に巻ける、ラチェット式ぜんまい巻上げハンドル
●上右/「ヤシカ8 T2」のイメージガール、東宝スター・白川由美さん
●下左/W8の生フィルム。装填時に感光する部分は、黒味リーダーとなる
●下右/W8現像直後のイメージ。 往復撮影のため左右の画面は逆行している

●オプションの3倍ズームレンズが小型映画の未来を予告
 
ダブル8は、当初は「エルモ」を筆頭に、今はやはり消滅してしまった「シネマックス」「サンキョー」「アルコ」などが参入し、間もなく「キャノン」「ニコン」「フジカ」「コニカ」なども揃い踏みとなって市場は活況を呈します。そうした乱戦模様の中で、各社はこぞって自社製品の性能をアピールする訳ですが、その中で極めてユニークな特徴を打ち出していたのがヤシカではなかったかと思います。

 
この時代の8ミリカメラは、各社とも標準と望遠の2本のレンズが組み込まれたターレット盤を回して画角を切り替えるタイプでしたが、「ヤシカ8 T2」にはオプションで、当時としては珍しい3倍ズームレンズが用意されていました。このレンズを装着してズームダイヤルを回すと、クランクがファインダーに連動してズーム効果を確かめることができました。カメラの価格の半分ほどもする高価なものでしたが、「これからの小型映画も、間もなくズームレンズの時代になるんだ」という、あこがれと夢を持たせてくれるものでした。

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●左/レンズを標準・望遠と切り替えるターレット部
 右/ズームレンズを装着。中央のダイヤルを回すとファインダーもズームに連動

●ワイド映画をお茶の間で
 ところで1957年といえば、映画の大部分はシネマスコープの横長大画面になっていました。ハリウッドではテレビに向かおうとする観客をスクリーンに呼び戻そうと必死になって大型画面の開発を続け、「シネラマ」などという途方もない大画面も出現し始めていました。ヤシカでは、そのような大画面も家庭で楽しめるようにしてあげたい、と考えたのでしょうね。なんと「ヤシカ8 T2」にシネスコ機能を付けてしまったのです。
 シネマスコープはワイド画面ですがフィルムの幅が広いのではありません。カメラのレンズの前に実際の風景を縦に圧縮して撮影できる「アナモルフィック・レンズ(歪像レンズ)」というものを付けて普通のフィルムに撮影します。そして上映するときには映写機のレンズにそれを付けると、元の撮影したときと同じ広い情景を映し出す、という仕組みなのです。

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●上/シネスコ用レンズを装着した「ヤシカ8 T2」と撮影画像(イメージ)
 下/画面縦横比1:2のシネマスコープ上映画面(イメージ)

 
画面の縦横比を「アスペクト比」と呼んでいますが、昔の映画やテレビ画面は「スタンダード画面」と呼ばれて「アスペクト比は3:4」と言い慣わされています。これは言い換えると縦1に対して横1.3にあたります。それを「ヤシカ8 T2」ではアナモルフィック・レンズを付けることによって1:2のワイド画面をお茶の間で楽しめるようにしたのでした。

 
ちなみに本当のシネスコは1:2.35でもっと横長です。また、シネスコサイズはデジタルビデオに変わった現在でも、どのメーカーも未だ手がけておりません。(ちなみに、今日一般的なワイドとされる9:16のビスタサイズは縦横比1:1.85になります) 

●映画好きの映画づくり、そのための充実機構
 「ヤシカ8 T2」にはこの他にも、プロ級のテクニックを駆使できるいろいろな機構が詰まっていました。
 ひとつは1コマ撮影ができること。これでアニメーションが作れます。
 また、アイリス
(絞り)
の絞り切り機構。これは画面を完全に真っ暗に出来るので、フェード・イン/アウトが可能です。他社ではこの機構は高級機にしか付いていませんでした。
 また、フィルム巻き戻し機構も付いていて、絞り切り機構でフェードアウトしたあと、5秒ほど巻き戻し、次にフェードイン撮影することによってディゾルヴもできました。

 
それから撮影コマ数がとにかく豊富。1秒64コマという高速度撮影(通常は16コマ)4倍のスローモーションが可能。反対に1秒8コマで実際の2倍の動きを作ったり(微速度撮影)、更にはテレビ画面をブラさずに写せるTVモード(115コマ)までありました。
 また、カメラを駆動させるゼンマイ動力
(スプリング)ですが、1回の巻上げで35秒持続というのは、他社と比べて一番長かったと思います。 

IMGP5542.JPG●撮影コマ数がこれほど多様な機種はヤシカだけ

  
このようにヤシカでは、アマチュアでも本物と同じような映画制作が体験できる、というところに主眼が置かれていたようでした。他社では最高級機として位置づけるこれだけの専門的な機構を完璧に備えながら大衆価格を貫いた「ヤシカ」は本当にすばらしい会社であったと思うのです。

 
現在は誰でもビデオを回す時代です。けれども昔、8ミリ映画に関心を持った人たちは、「映画を作りたい」という明確な目的と意志を持った人たちでした。これらのマニアックな機能は、まさにそういった人たちのために検討され、磨き上げられたものだったのです。 

■諸元
名称   ヤシカ8 T
メーカー ヤシカ(日本)
発売年度 1957
タイプ  W(ダブルエイト)方式 
     2本レンズターレット
駆動方式 スプリング式 標準撮影(1秒16コマ)で最大35
レンズ  ヤシノン f1.4  Dマウント 
     
13mm(標準) 38mm(望遠) / 広角6.5mm(別売)
撮影コマ数 1.8.12.TV.16.24.32.64コマ/秒  
特徴   ・交換レンズに対応するズームファインダー
     ・絞り込み機構によりフェード撮影可能
     
・フィルム巻き戻し機構により多重露光可能
     ・1コマ撮影機構によりアニメーション可能
     
・別売ヤシカスコープレンズにより縦横比1:2のワイド画面に
     
・露出は露出ガイドを参考にして合わせるマニュアル方式
発売時価格・本体価格不明     
     ・ヤシノン広角 
f1.4   6.5mm              7,500
     ・ヤシカズーム f2.8 1338mm 3倍ズーム 11,950

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