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耐えること…それが根性の出発点 [あんなこと、こんなこと]

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あんなことこんなこと―9
耐えること…それが根性の出発点
中学生時代 1954~1956(S29-31)一② 

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●長岡市立山本中学校 1956(S31)卒業記念アルバムより

●山の手は、昔栄えた東山油田
 
1954(S29.11)年に町村合併で長岡市に編入される前、山本村の山の手(と言っても山の中のこと)には、明治から大正時代にかけて東山油田と呼ぶかなり大規模な油田があったということでした。小学生の頃遠足に行ったことがありますが、真っ黒なドロドロの原油を貯めた小池や石油ヤグラもまだ何基か残っていて、ポンプが細々と石油を汲み上げていました。村は戦前まで石油採掘の基地として、今よりは栄えていたと父から聞きました。
 
まだ稼動を続けていた東山には石油会社の事務所や社宅があります。合併による8つの集落の結合で、そこの中学生も山本中学生で学ぶことになりました。それまではほとんど農家の子供たちだけ。そこにサラリーマンの子供たちが加わったのです。どこか垢抜けて都会的な雰囲気を感じさせる彼ら・彼女らは、引っ込み思案のいなか育ちにとってはとても新鮮でした。彼らが加わったことで、校内が活性化したことは確かでした。
 油田のある東山には小学校の分校があり、山の小学生は冬はそこで学習していましたが、中学生になったら山本中学校に通学しなくてはなりません。冬になると彼らは毎日、たとえ吹雪の日でも雪山を越えて1時間以上もかけてスキーでやってきました。当然朝早く家を出て、危険な谷や沢や森をすり抜けて下ってくるわけですが、帰りはもっと大変です。授業が終わるとそこそこに帰路に着きます。けれども冬は日暮れが早いので、帰宅は薄暗くなってからだったと思います。それでも事故の話は聞いたことがありません。いかに彼らのスキー技術と自然適応能力が高かったか。いずれにしても、彼らがその通学体験で学んだことは計り知れないと思います。
 

IMGP4125-2.JPG●明治30年(1897)頃の東山油田の情景

●自然環境と先生が鍛えてくれた「忍耐と根性」
 中学校が山の中という好条件の学び場に加えて、中学時代は季節ごとに自然の中での教育が行われていました。今から見ればそのほとんどが、人手を加えていないありのままの自然の中でした。
 春の写生遠足をはじめ、学校のすぐ裏山での「青空教室」と呼ぶ授業。これは理科の自然観察だったり、美術で絵を書いたり、音楽で合唱したり、あるいはホームルームのような内容で過ごすこともありました。ホームルームでは校内の問題解決についての討議がなされたりしますが、自分の意見を主張するだけでなく、人の話をよく聞く姿勢も学びます。
 夏は臨海学校。1泊泊まりの海水浴です。砂浜が狭く、水際からすぐに深くなっているのが波荒い日本海の浜辺の特徴。小学生時代、田んぼの緩やかな用水で泳いでいたのとは訳が違い、大きな波に巻き込まれてキリキリ舞いをしていました。
 秋は遠足。少し遠出ができるのでみんな楽しみにしています。本当に良く歩いたと思うほど、相当遠くまで足を延ばしました。当時の遠足は文字通り「遠くまで歩いて行って、また歩いて帰って来る」ことでした。「何を見てくるか」よりも「最後まで完遂すること」。だから、往路よりも帰路が大事なのです。疲れた生徒のバッグを代わりに担いでやる気持ちは、みんな自然に身に付けていました。
 冬は300mの高台にある学校の立地がものを言います。その傾斜がそのままふもとまでスキー場になります。山本中学校はスキー場付きの中学校なのです。この傾斜には細道があって、普段は通学路になっているのですが、それがスキー大会のコースです。コースは曲がりくねり、曲がり角の木立のあたりは日が当たらず、アイスバーンになっています。スタートからの加速が極まった頃、このアイスバーンに達し、大抵は横滑りに転倒してしまいます。けれども、東山からスキー通学の彼ら・彼女らにとってこんなコースは朝飯前。いともやすやすと曲がり切り、格好よくゴールインしていくのでした。 

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●青空教室はグランド脇の林の中 今日は写生会 卒業記念アルバムより
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●画面中央のなだらかな傾斜でスキー大会 写真右手の傾斜の上が山本中学校(林の陰)

●泣く子も黙る突撃先生
 
夏目漱石の「坊ちゃん」に登場する先生方に比べるとアクの強さは少々薄れますが、当時の先生方もなかなか個性的でした。絵描きさんそのままのベレー帽が板についた美術のI先生。役者のようなモジャモジャ頭がお似合い、国語と演劇部顧問のM先生。眼鏡のモダンボーイ・英語のA先生。お坊さんでもある謹厳実直型のW先生とK先生。M校長先生が穏やかなお父さんタイプなら、これまた柔和なT教頭先生は文字通りの女房役にぴったりと収まり、とてもいいコンビを形成していました。教頭先生は数学の先生でしたが、数学が大の苦手の私たちを、夜、自宅に呼んで教えてくださいました。奥さんが手作りのドーナツを出してくださり、その時初めてドーナツを知りました。数学は先生のお宅では分かったつもりで帰るのですが、帰ってやってみるとやはり解らない。とにかく数学はダメでした。
 
極めつけは理科と体育のT先生です。T先生は予科練帰り。なんでも南方で随分ご苦労されたようで、遠征中や戦場におけるトイレについてのうんちくがとてもおかしくて心に残っているのですが、とにかく声がでかい。いつも威圧するように胸を張って周りを見回しながらすたすた歩き、何か見つけると大音声が響きます。生徒は何か言われないかとビクビクしていました。全校集会などで体育館いっぱいに響き渡る大声でT先生に名前を呼ばれると、文字通り飛び上がるほどの迫力がありました。
 
T先生は軍隊で、良くも悪くも精神と肉体を共に鍛える教育を受けてきたのでしょう。体育の時間は真冬でも男子は上半身はだか。下は半ズボンです。体育館の床を背に毎回3分間の足上げ…両足を揃えて15度に上げたままの姿勢を3分間持続できるまでしごかれます。初めは2分弱がやっとだったものが、訓練で3分間持続できるようになりました。体育館の床は汗でシミになります。そのあとがまた大変。雪が降る日も外の運動場ではだかのまま全員駆け足。とは言っても走る道もなく、胸までありそうなグランドの雪を両手で分けて進まなければならないので、これは50mほど進んだところで許されました。

 
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sig

yannさん、たくさんご覧頂いてありがとうございます。
by sig (2008-05-09 12:34) 

いぬ

sigさん こんばんは
先生の話し良いですね
たくさんのタイプの先生がいたのですね
みんな同じじゃあ つまらないです
僕の高校の時の担任は面白い先生でした
酔っ払って帰ってトイレに入ろうとしたら誰かが入ってる
速く出ろよ~とトイレのドアを蹴ると 担任が酔っ払った顔して
お前~俺は飲み過ぎで気持ち悪いのに煩せんだよ
と蹴っ飛ばされました
今こんな先生いたら大変だろうなぁ
by いぬ (2008-05-09 17:41) 

puripuri

日本にも油田があったのですね。もしかすると、これから掘っても出てくるのでは?
私達が習った頃の先生は、怖くもありユニークな先生達だったように思えます。
あだ名も、代々と受け継がれていったり。
今の先生達に、もっとゆとりがあれば・・・と思うのですが。
by puripuri (2008-05-09 22:35) 

sig

いぬさん、ご来館ありがとうございます。
個性を伸ばすためには、まず先生が個性的でなくちゃ、ね。
いぬさんのおっしゃる通り、みんな同じじゃ、それこそ軍国教育になっちゃいます。

by sig (2008-05-10 09:05) 

furukaba

おはよう御座います。
沢山の懐かしい記事に頷きます。また懐かしく思います。
軍服を着た先生やモンペを履いた若い女性の先生がいて
ワルだった私には痛い思いの残る時代でもありました。
by furukaba (2008-05-10 11:34) 

sig

puripuriさん、ご来館ありがとうございます。
内陸部の東山油田に対して、日本海側には西山油田がありました。当時新潟県ではあちこちで石油が採れたようですが、現在は掘り尽くされているようです。先生についての思い出も懐かしいですね。
by sig (2008-05-10 15:10) 

sig

furukabaさん、こんにちは。
小さい頃のワルというのは、特に男の子にとっては一種の通過儀礼のようなもので、良くも悪くも、その年頃らしい経験をひと通り積んでおくことが大事なんでしょうね。
中学時代には生徒の方にも先生を見る目ができる時期でもありますね。
by sig (2008-05-10 15:21) 

sig

kemmさん、いつもご覧頂き、ありがとうございます。
by sig (2008-05-10 22:59) 

sig

くらいふさん、ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-05-10 23:00) 

sig

kontentenさん、ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-05-12 10:31) 

sig

xml_xslさん、ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-05-12 19:00) 

sig

ChinchikoPapaさん、ご来館ありがとうございます。
この前電話でお話したChinchikoさんのCGが見つかりましたので、明日にでも郵送いたします。
by sig (2008-05-19 20:10) 

sig

TAKAさん、いつもご来館ありがとうございます。
by sig (2008-05-19 20:11) 

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