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「アサヒペンタックスSP」勝手に40周年記念 [昭和ガラクタ箱]

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「アサヒペンタックスSP」勝手に40周年記念

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●新宿小田急脇「モザイクロード」 アサペンにて1971   ●同じ場所2008.8 

●考えたら「アサペンSP」購入後40年経過
  今こそスチルカメラで一眼レフは当たり前の時代ですが、その歴史は40年以上も前に遡ります。それまで、ファインダー用と撮影用のレンズが2段に重なっていた二眼レフを、何とか1本のレンズで済ませられるように改良を重ねて実現した方式が一眼レフです。 1950年代初期にはカメラメーカー各社とも一眼レフを競って発売しますが、最初はミラー式で、現在のようなペンタプリズム方式になったのは1957年ころからでした。

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●逆ガリレオ式透視ファインダーを備えた「アサヒフレックスⅠ」1952と「アサヒペンタックスSP」1964

   私が購入を決めた旭光学の「アサヒペンタックスSP」は、1960(S35)年のフォトキナに出展された世界初のTTL(Through The Lens)35mm一眼レフカメラとして話題を呼んでいました。レンズから入った光で露出を測るという現在では当たり前のことも、当時は画期的なことだったのです。
    「アサヒペンタックスSP」の発売は1964(S39)年7月。購入は3年後の1967(S42)年7月。26歳の時でした。この間改良が加えられましたが、購入時、3年経ってもモデルチェンジのないベストセラー機でした。

●撮影会もひと通り経験。ねらいはゲージツ写真
 
 一眼レフを持てば、気分はもういっぱしのカメラマン。交換レンズはもっともポピュラーとされる最低限の広角28ミリと望遠135ミリを購入。フィルターもひと通り揃えて、頑丈で重いアルミのカメラケースに一式を詰め込んで、休日といえば撮影に出かけていきました。
  
若かったから格好もそれらしく決めたい。ポケットがたくさん付いていて撮影に何かと便利ということあって、流行の白のサファリルックに身を包んで総仕上げです。だれも見ているわけでもないのに、今思えばなりきりの自己満足です。

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●上/左・広角28mm、本体に標準55mm、右/望遠135mm
●下/本体にリングをかませて望遠135mmを270mmとして使用


  そのうち風景だけでは物足りず、やはり人物を撮りたくなります。周りにモデルさんはいないので、メーカーやカメラ店が主催する撮影会には何度も参加しました。
 そのころ大映で売出し中だった、まだあどけなさが残る関根恵子(現在は高橋恵子)さんのゆかた姿も撮影させて頂きました。当時彼女は危急存亡の映画会社・大映を一人で背負って立っていたのでした。程なく大映は倒産し、彼女は東宝に移ることになります。

●誰もがとらわれるフィルムカメラの誘惑?
  
私は現在、日常の風物や出来事をデジカメで気軽にスナップ撮影しているだけですが、「アサヒペンタックスSP」を使い始めた頃は、大方の写真マニアの例に漏れず、興味本位で現像・焼付け・引き伸ばしの道具一式を揃えて、いわゆる「押入れ現像」をした経験があります。失敗したら取り返しがきかないフィルム現像はさすがに怖くて、ラボに出しましたが、この「押入れ現像」はフィルムカメラマニアの誰もがかかる病気ではないでしょうか。

  家族が寝静まった休日前の深夜、写真雑誌の別冊の指南書を手元に、解説と照らし合わせながら、現像液、定着液を調合し、焼き上がりの写真を水洗いするための水をたっぷりと張った大型バット(四角で浅い容器)を用意したら、押入の中はにわか写真屋に早変わり。
  赤い小さなランプをつけての作業は窮屈でしたが、焼付け機にフィルムを通した後、印画紙に何秒感光させるかも勘なら、現像液に何秒浸けるかも勘。分かっているのは仕上げの水洗は薬品が完全に流れ去るまでということだけ。
  ネガの濃さ加減を読んで感光時間を決め、白い印画紙にネガ像のピントを合わせ、ぶれないように注意しながらライトを照射するときのハラハラドキドキ。それを現像液に浸すと、白色だった印画紙にじんわりと像が現れるときのトキメキ。作業は結構時間もかかり、ふすまを開けたら朝、ということも一度ならずありました。

  この楽しみも間もなくカラーの時代を迎えて、現像が難しくなってやめてしまいました。けれども、すべてが勘と手作業によるこの緊張と至福の時間は、今思うとまさにアナログならではの楽しみだったのでした。

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●上/1972年の年賀状用に使った写真 佐島マリーナにて 1971  
●中/仕事の現場でポスター撮影のモデルさんをちょっと拝借して撮影 1971
●下/六本木の仕事場近くの公園にてスナップ 1971


   この記事を書いていて、私がこのカメラを手にしてから40年も経ったことに気がつきました。これまでに何回かオーバーホールを重ねてきたせいか、今でも十分に使えます。数年前、このカメラを持って出かけたことがありましたが、偶然同じカメラを下げた人と出会いました。通り過ぎただけでしたが、一瞬顔が合った瞬間、気持ちが伝わった気がしました。

  さあて、今年の紅葉は40年ぶりにアサペンで撮ってみるか。


●「アサヒペンタックスSP」の主な仕様
・レンズは、フレアが出にくいスーパー・マルチ・コーティング(SMC)を施したスーパーマルチタクマー ※タクマーレンズのタクマーとは「切磋琢磨」の琢磨のことだそうです。
・シャッターはフォーカルプレーン
・シャッタースピード B、1、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125、/1/250、1/500、1/1000
・フィルム感度 ASA20~1600に対応(当時の感度はASA400が最高)
・露出計は水銀電池を使用
・レンズ交換はスクリューマウント式(当時は唯一の国際マウント)

●「アサヒペンタックスSP」の価格(発売当時)
・ボディは白と黒の2種  ボディ価格 ¥30,000
・50mm f1.4 付き    ボディとも  ¥49,900
・55mm f1.8付き   ボディとも  ¥42,000
・皮ケース                    ¥2,500

 
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walz

この頃のカメラのことは話でしか聞いたことがないのですがちょっと羨ましかったりします
リアルタイムにこの頃のカメラと出会っていたら今よりもっと楽しかったのではと思います
しかし、SMCがスーパーマルチコーティングだとは知っていましたが、タクマーレンズのタクマーが「切磋琢磨」の琢磨だとは知りませんでしたー
by walz (2008-09-30 02:08) 

sig

walzさん、こんにちは。
昔はカメラに限らず、何でも手動ですから、頭で考えながらやる必要があったんですよね。手加減や調整といったようなことがすべてに絡んでくるのです。その難しさがまた楽しさであったという典型がカメラ、写真であったような気がします。「考える」という楽しさは人間だけが味わえる楽しさかもしれませんね。コメントありがとうございました。
by sig (2008-09-30 08:17) 

sig

Ja-Kou66さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-30 13:41) 

sig

xml_xslさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-30 13:42) 

yann

日本の1眼レフこのころは
ペンタックスSP
キャノンF-1、FT-b
ニコンF
ミノルタはなんだったかな? でしたね。

SPはほんとに長く第一線にいました。

私の最初の1眼レフはキャノンFT-bでした。
(2眼レフは子供の頃、覗いただけなんです)
これもいいカメラでしたよ。

色黒の現像もやりましたよ、私の頃は現像タンクが発売されており、
比較的簡単にフィルム現像ができました。


by yann (2008-09-30 15:10) 

ねこじゃらん

こんにちは。
カメラ(機械系)のことがまったくわからなくて申し訳ないです。^_^;
スナップの子供の服が気になったりして。。
あ、今でも母親の若い頃の服を私が着ていたりするんですよ。
昔の服はしっかりしているから、もちますね〜。^_^
by ねこじゃらん (2008-09-30 16:21) 

sig

ChinchikoPapaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-30 16:31) 

sig

yannさん、こんにちは。
キヤノンFTもすてきなカメラでしたよね。やはり当時の最高峰ニコンFは欲しいとは思いましたが、手が届きませんでした。あの当時すでにどのメーカーも一眼レフの到達点にありましたね。
フィルム現像もご経験とは本格的でしたね。DPEは難しいだけに面白かったし、楽しかったですね。
by sig (2008-09-30 16:37) 

sig

ねこじゃらんさん、こんにちは。
お母さんのお若い頃のお洋服を着用なんて、すてきじゃないですか。流行は30年周期なんて話があったりして、私もトレンチコートなど昔のものをおいてありますよ。この記事の頃着ていた気に入りだったダブルの紺のブレザーはさすがにスリムすぎて処分しましたが。
一番下の少女二人の写真、37年前ですから、彼女たちも立派な大人のはず。どこで幸せに暮らしているのでしょうか。
by sig (2008-09-30 16:45) 

いぬ

sigさん こんにちは
見事な写真ですね 惚れ惚れします
タクマーレンズ 僕も二本持ってました
広角と望遠と デジタルも良いけど
真剣になれたのはフィルムでしょうか
今は偶然ばかり狙っています
by いぬ (2008-09-30 16:56) 

sig

こんばんは、いぬさん。
いぬさんもアサペンではほぼ同様のご経験のようですね。
ここに掲げた37年前の昔の写真4点は、ネガが分からないので四つ切写真を黄ばみもあえてそのままに、デジカメで単純に手持ち複写しただけなんですが、良く撮れますね。これも技術の進歩でしょうか。
フルオートやデジタルで、だれでも写真が簡単に扱えるようになったことは、やはりすごい進歩なのでしょうね。
by sig (2008-09-30 18:53) 

puripuri

その当時と現在の様子、、随分と様変わりしたのですね。変わって当たり前ですね。
「ペンタックス、ペンタックス・・・ズームイン」 CMがありましたね。違ったかしら?
sigさんが現像されている様子が手に取るようにわかります。
兄がやっているのを横で見てたりしていました。現像液に浸していると少しずつ
現れてくるのをジッと傍で見てました。現像したフィルムも何本もぶら下げたり、、
撮影会に行ったりして、sigさんは行動派なんですね。
by puripuri (2008-09-30 18:56) 

sig

puripuriさん、こんばんは。
puripuriさんはお兄さんの影響をとても受け継いでおいでなのですね。
写真が好きになったのも、そうしてお兄さんのそばにいたからですよね。
いいご兄妹だった様子が伺えてほほえましくなります。
私の知っているCMは、まだズームの前の時代ですから、帽子をかぶった黒いキャラクターが「ペンタックス、ペンタックス、ペンタックス」と言いながら画面を横切るのだけでした。(笑)

by sig (2008-09-30 19:43) 

sig

furukabaさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-30 22:08) 

路渡カッパ

やりましたよ、押し入れ現像。
修学旅行用に買ってもらったハーフカメラが宝物でした。
by 路渡カッパ (2008-10-01 10:06) 

カメキチ

今日は、昨日は何故かコメントが入りませんでした。
アサペンSPは私の仕事のよきパートナーでした。ニコン、キャノンが高価で買い求めることが出来ず、比較的安価なアサペンをメインカメラにしていました。新宿小田急横の「モザイクロード」は当時としては斬新な感覚の道路?でした。ここでモデルさんを使ってCM用の写真を撮ったことがあります。
アサペンSPは2年前まで手元にありましたが、使えなくなり残念ながら処分しました。
by カメキチ (2008-10-01 10:52) 

sig

路渡カッパさん、こんにちは。
ご共感頂きましてありがとうございます。カッパさんも押入れ現像までとは、かなり入れ込みましたね。(笑)
ハーフカメラは今でも健在ですか?
by sig (2008-10-01 12:46) 

sig

カメキチさん、こんにちは。
アサペンSPをご愛用でしたか。私も主に記録ですが、仕事でも大いに利用しました。
新宿「モザイクロード」は確かに当時は絵になる場所でしたよね。
上の写真は一応「都会の寂寥感」みたいなものを表現したつもりの自主作品なんです。
by sig (2008-10-01 12:54) 

sig

八犬伝さん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-10-02 00:20) 

kontenten

SP・・・イイですね♪
私が生まれたのはSPが発売される1年前
ご多分の漏れず、子煩悩な親父が私を撮るために買ったのは
SPの廉価版SVでした。
特別映像に興味のなかった親父は55mmF1.8標準を一本
革製のケースに入れて大切にしておりました。
今では、布製のシャッターがカビて使えそうもありませんが
大事な大事な親父の形見です(^^)
by kontenten (2008-10-02 17:10) 

sig

こんばんは。
kontentenさんのお父さんはSVでしたか。使えなくても思い出の品。大事にしてこられたのですね。
そして今ではカメラ三昧。きっとお父さんのカメラが導いたのでしょう。
これからもいっしょに写真を楽しみましょう。
といっても今の私はデジカメオンリーですが・・・。

by sig (2008-10-02 23:31) 

ヨタ8改

実家には、MEがまだ有るようです、父が買って、兄が使い、兄の娘も使っていたようです・・・フィルムカメラは、お遊び程度しか触って無いし、デジイチも買ったばかり、まだまだ、これからですね~、色々撮りながら、楽しんで行きたいと思います。多分、僕も、デジタルオンリーになってしまうと思いますが(^^♪
by ヨタ8改 (2008-10-03 11:01) 

sig

ヨタ8改さん、こんにちは。
昔のフィルムカメラは、時計がそうであったように歯車が多いです。それに比べるとデジカメにはそうした機構が不要でプリント配線した基板だけ。そこに物足りなさを感じる人が多いのですが、デシカメしか知らない世代にも、そういうカメラの時代があったということは知ってほしいのですよね。
今sigはコンデジだけですが、カメラというよりおもちゃを扱っているような気がします。
by sig (2008-10-03 13:39) 

sig

leoさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-10-03 13:40) 

sig

kemmさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-10-03 13:41) 

sig

チョコシナモンさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-10-03 13:42) 

みかっち

時代を超えた見比べ写真、とても面白いです!
押入れ現像のお話で、忘れてた記憶が。。。
中学生の時、写真部にいたので、階段下の狭い部室兼、暗室で、
白黒フィルムの現像と焼付けをしたのを思い出しました。
酢酸の匂いが懐かしいっ(笑)

モデル撮影回の写真は、何度も見たことあります。
ヌードの撮影回などは、とてもアートとは思えないようなアングルでも、
仕上げて渡さなくてはいけなかったので、
なんかぁ。。納得いかなかったのを思い出しました。
あっ 現像所に勤めていたんですっ。まだ若い頃は(笑)
ちゃんと、その時からカメラ始めればよかったなぁ。。。
でも、お金かかりましたもんねぇ~

by みかっち (2008-10-04 01:23) 

sig

みかっちさん、こんにちは。
旧い写真と現在の情景を対比させることは案外好きなんです。
もっとたくさんの街の写真を撮っておきたかったのですが、昔は写真にお金がかかりすぎました。
みかっちさんは中学時代は写真部とか、現像所にお勤めだったとか、はじめから写真にどっぷりじゃないですか。道理でセンスがいいわけですね。みかっちさんの秘密が分かりました。これからもブログ、楽しみにしております。
by sig (2008-10-04 10:32) 

Qoo

アサペンで撮ったsigさんの紅葉が見たいな~
自分で焼き付けまでしてたのですね
めっちゃ興味あるけど・・・ 女房が怒るだろうな~(^O^)
by Qoo (2008-10-10 06:29) 

sig

Qooさん、こんにちは。
押入れの中での現像と焼付けは、上の段の布団をどかさないと。下でやると頭をぶつけちゃうから。だから結構準備が大げさになるんですよね。
それに単なる水ならまだいいんですが、薬品を使いますからね。よほど奥さんの理解かあきらめがないとなかなかやれない作業ですよ。(笑)
by sig (2008-10-10 07:09) 

sig

yamagatnさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-10-12 22:09) 

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