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大砂塵にまみれながら観た西部劇 [「動画」の自分史]

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大砂塵にまみれながら観た西部劇

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  中学生の頃(1953~55/S28~30)、歳の離れた兄たちからは「フィルムきちがい」と言われながらも、家では暇さえあれば手書きの紙フィルム作り。学校では映写班に属して、時たま16ミリ映写機を触らせてもらっていた頃のこと。映画館で上映される映画は白黒から総天然色に。画面は四角いスタンダードから幅広のワイドスクリーンへ。音響はモノラルからステレオへと大躍進中だった時代。私の映画との接し方は、芸術作品からB級映画まで玉石混交。まさに清濁併せ呑む鑑賞の仕方をしていました。

 
当時の長岡の映画館は、国鉄・長岡駅前からまっすぐに伸びる大手通りを少し行った交差点を右に曲がってすぐ。そのあたりが映画館街になっていて、「銀映」「長映」など、松竹、大映、東宝などの邦画を上映する映画館と洋画専門の「ニューギンザ」「エメラルド劇場」があり、シバタという興行会社が一社で運営していました。中学・高校生時代はすべてこの映画館街で映画を観ていたわけです。

 
上映の順序は、どの映画館でも、まず次回の予告編が上映されたあと、5分程度のニュース映画が上映されます。邦画館では「朝日ニュース」「読売ニュース」「産経ニュース」がありました。また洋画専門館では「パラマウントニュース」「メトロニュース」などを上映していました。それが終わるといよいよ本編の上映ですが、洋画の場合には、時々本編の前にディズニーの短編漫画が上映されることもありました。このように、ミッキー、ミニー、ドナルド、グーフィ、プルートなどが活躍するディズニーの漫画映画は、ものごころついた頃からとても身近なものとして存在していたのでした。

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●1950年代前半、邦画各社のクレジットタイトル

 
当時は家庭ではラジオ、外では映画が最大の娯楽でした。映画館は常に超満員。この頃は入れ替え制ではないので、映画館に到着したら、途中からでもお構いなくそのまま上映中の場内に入り込み、暗がりを透かして空席を探します。空席が見つかればいい方で、大抵はその映画が終わるまで立ち見です。この頃は「二本立て」といって、呼び物の映画の他にもう1本の映画をペアにして公開する興行形態がとられていました。安上がりの料金で長時間楽しめるというお徳用感をアピールして動員を図るという狙いからのようでしたが、映画が始まったばかりで入場すると、ほぼまるまる1本立ち見ということになります。映画の長さは通常1本90分前後。2時間以上の作品は大作というふれ込みで、1本立てロードショーとなるのでした。

 
さて、途中から観た映画が終わって場内が明るくなっても、たいてい頭からきちんと観ている人はいませんから、休憩時間になったからといって出て行く客はあまりいません。つまり席が空かないのです。場内ではちょうど駅弁売りのような格好で、お菓子やアイスクリームなどが入った箱を肩紐で下げた売り子、といっても女の子に限らずおじさんだったりするのですが、「えー、おせんにキャラメル! いかがですか」と回ってきます。でも、それどころではありません。やっと空席を見つけて「そこ空いてますか?」と聞いても大抵はノー。たずねたずねて最前列のあたりまでいくことになります。場内がどんなに混雑していても、さすがに前から2~3列あたりは空いています。背に腹は代えられずに何とか座るのですが、そこはかぶりつき。席に座るとスクリーンは眼前にそびえ立っています。

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●1950年代前半、洋画各社(アメリカ)のクレジットタイトル

 
映画がスタンダード画面(縦横比3:4)の場合は何とか集中して観ていられるのですが、シネマスコープ(縦横比1:2.39)だったらもう大変。頭を左右に動かさなければ画面全体を見ることができません。まさに風景を眺め回している感じ。また当時は日本語の翻訳スーパーは画面右に縦に出るようになっていましたから、登場人物の動きを追うのとスーパーを追うのとで大忙し。その上スクリーンの画像は離れて見てこそクリアなのですが、前の席では拡大されたフィルムの粒子がちらちらと踊っているのです。

  それはそうでしょう。映画フィルムのひとコマは普通の切手ほどの大きさ。それが横10mほどもあるスクリーンに拡大されるのですから。ところが、それがかえって西部劇の醍醐味である荒野のシーン、広漠たる砂漠のシーン、あるいは息詰まる決闘シーンなどでは荒涼感を増幅させてくれ、まさに砂ぼこりを浴びながらの臨場感で、眼前で展開するクライマックスシーンにどっぷりと浸ることができました。

 
ところで二本立てでは、途中から観た映画が終わるとすぐに次の映画が始まります。だからさっき見た映画の頭は、次の映画の後まで待たなくてはなりません。とにかく映画が始まると、最初に映し出されるのがクレジットタイトルと呼ばれる映画会社のマーク。各社とも企業色を明確にアピールするデザインで、「さあ、わが社が腕によりを掛けて製作した映画ですよ。面白いですよ」と呼びかけてくるようで、どれ、と期待感が高揚します。
 家で紙フィルムを作って遊んでいる中学生にとっても、自分のフィルムの頭に付けるクレジットタイトルのデザインをどうしようかという思いがよぎります。

 
私の映画鑑賞法ですが、必ず2回観ることにしていました。1回目は大抵途中からですし、何と言っても学校では演劇部ということで、俳優の演技を観察するチャンスだと思っていたからです。そのかわり2回目は純粋に映画を楽しみます。
演技を見る場合は、邦画だったら台詞回しや間のとり方、台詞がないときの動き、リアクションなどに注視しました。ところが考えてみると、映画はリアルタイムで進行する舞台と違って、撮影後に編集して組み立てなおすものだということに気づきました。そう考えれば戯曲とシナリオにおける形式のちがいが分かりますし、演出の仕方や演技術が大きく異なることも分かってきます。
  このように、映画を2回観ることで映画と演劇の特性をはっきりと認識できたことは大きな収穫だったと思います。

 それはともかく、場内が満員大混雑の上、館内の空調がうまく働かないものですから、映画が終わって帰るときには必ず頭の芯がズキズキといつまでも痛んで辛い思いをしました。2本立てを2回、合計6時間以上も映画館に入り浸っていられるのは学生の特権とはいえ、払った代償も大きかったのでした。

 
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Qoo

映画に目覚めたのは社会人になってからですが
小学校の頃に見た映画は「君は海を見たか」と「ゴジラ」
だったかなー、怪獣映画
砂嵐があった気がします
中学、高校も殆ど映画は見なかったな~
最近はDVDがあるので昔の映画もよく見るようになりました
やっぱり、黒沢映画は今見ても新鮮ですね

余談ですが、長岡なんですね
幼少の頃、下田村にいました。今は三条市ですね
by Qoo (2008-06-13 05:18) 

sig

おはようございます、Qooさん。
今、Qooさんのブログへ行ってきました。昭和記念公園が近いようで、Qooさんが育ったところも現在も、偶然ですがsigの近くにお住まいのようですね。
これは私が「自分史ブログ」と称して書いているまったくプライベートなものですが、どうせなら共通項のある方々(同世代、映画愛好、ビデオ愛好、生涯学習関連、教育関連)にも楽しんでもらいたいと思って進めております。これからもどうぞよろしく。
by sig (2008-06-13 10:06) 

sig

ChinchikoPapaさん、早々にご来館ありがとうございました。
実は会社の帰属が転々としたUnited Artistsの初期のクレジットタイトルはなかなか見つからず、これはsigの記憶に基づくダミーです。
by sig (2008-06-13 12:47) 

sig

茶々猫缶さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-13 18:48) 

puripuri

私の記憶と合うとこがたっくさんあるので、「そうそう、あの当時はそうだったわ」と
思いながら読ませていただきました。
昔は途中から入れたので、しかも二本立てで終わったらそのまま最初から観てましたものね。 時代劇は、父と「銀映座」に行ってました。
by puripuri (2008-06-13 22:31) 

sig

xml_xslさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。

by sig (2008-06-13 23:21) 

sig

puripuriさん、こんばんは。
同じ体験をした、という思い出のお話、ありがとうございます。
戦後のある時期までは、全国民が共通の体験をしていたと思われますので、このブログではそのあたりまで昔話を続けようと思います。
昔はスクリーンのことを「銀幕」と言っていたので、「銀映」「銀映座」という名の映画館は全国のあちこちににあったのでしょうね。

by sig (2008-06-13 23:30) 

sig

kemmさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-14 08:53) 

sig

Takemoviesさん、ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-15 09:40) 

sig

八犬伝さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-16 22:58) 

チョコシナモン

(*´・ω・)ノこんばんわぁ 遠い記憶が甦ってくるようです。
by チョコシナモン (2008-06-17 00:29) 

花火師

長岡の駅前に映画館街があったんですね。
おいらの場合、仕事で新潟に住んでいて長岡や見附なんかもお世話になった方がたくさんいてよく知っていますが・・・50年代はちょっと分かりませんでした
 僕がいた当時も残っている昔の建物というと、日赤病院ぐらいですかね
by 花火師 (2008-06-17 01:40) 

sig

花火師さん、コメントありがとうございます。
最近は長岡に帰っても市街を歩き回らないので、ほとんど知りません。
昔は5館ほどあったと思うのですが、映画館の名前を思い出そうとしても上記の2館しか浮かびません。
今の映画館はどうなっているのかも分かりません。
日赤病院がそのままあるというのはうれしいですね。
by sig (2008-06-17 08:29) 

sig

チョコシナモンさん、お早いご来館、ありがとうございます。
思い出のよすがになればなによりです。これからもどうぞよろしく。
by sig (2008-06-17 08:31) 

sig

バズー☆ さん、ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-17 17:37) 

sig

corradoさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-06-17 22:23) 

sig

TAKAさん
kontentenさん
ねこじゃらんさん
いつもご来館、ありがとうございます。
by sig (2008-06-18 15:04) 

sig

みかっちさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。

by sig (2008-06-22 16:53) 

sig

leoさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-07-10 09:23) 

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