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小説より好きだった戯曲とシナリオ [「動画」の自分史]

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小説より好きだった戯曲とシナリオ 

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●カタログで学んだ映画の知識
 
高校時代、勉強は二の次で、ほとんどの時間を演劇活動に打ち込んでいた私ですが、もう一つの興味は、1955(S30)年頃から急速に脚光を浴び始めた8ミリ映画でした。子供の時から映画のフィルムをおもちゃにしてきた私が「8ミリ」に関心を持たないはずはありません。高校3年の夏には借り物の8ミリカメラで有楽町界隈を試し撮りしましたが、それはあくまでも借り物。簡単に8ミリカメラを買うことなどできませんから、せいぜい長岡のカメラ店で各社のカタログをせっせと集めていました。時々16ミリのカタログも店頭に置かれていることがあり、なかなか手に入らないものだけに、それを手に入れた時の喜びは8ミリに増して大きいものでした。
 
 
カタログによる検討は、詳しく知ろうとすればするほどスペック(技術仕様)を詳しく掘り下げていくことになります。その過程で専門知識が知らず知らずのうちに身に付きます。いろいろ集めた各社の8ミリカメラカタログを比較しているうちに専門用語も覚え、単に8ミリ映画に留まらず、「映画」そのものの本質や技術的な部分をも知らず知らずのうちに学んでいたような気がします。とに角カタログはタダである上、最高の教科書でした。 

●高校3年はテレビ元年。電気屋さんに入りびたり 
 長岡市でモノクロテレビの画像が一応見られるようになったのは1959(S34)年でした。この年が開け、高校生活もあと3ヶ月という頃、毎日のように近くの電気屋さんに入り浸って、デモ用に展示されているゼネラルテレビで、地元劇団の仲間たちといっしょに、NHKで放送される劇場中継に目を凝らしていました。

IMGP0269-2.JPG●1950年代半ばの14インチモノクロテレビ

 
そのころ劇場中継された舞台は、当時の日記によると下記の通りです。
2/8 俳優座、文学座、民芸による新劇合同公演。千田是也演出。滝沢修、山田五十鈴、東山千枝子「関漢卿(かんはんちん)」。回り舞台を十二分に活用した伊藤憙朔の舞台装置は驚きでした。
同日、木下恵介監督初のテレビ時代劇「最後の鎧武者」。伊藤雄之助、音羽信子、芥川也寸志、石浜朗主演。明治初頭の古い思想と新しい思想との対立は、現在の父子にも通じるところがあると思いました。
2/28 日劇「春のおどり」ライブ中継 
3/7 俳優座。田中澄江作「がらしゃ細川夫人」。
 
 
この当時のテレビは録画という概念も装置もまだなく、すべてライブ(なま)で演じられていました。いわゆる「ぶっつけ本番」。そのために山村聡、桑野みゆき主演のテレビドラマ「落陽」では、役者に台詞を陰で教えるプロンプターの声がはっきりとマイクに入っていたり、人気番組「事件記者」では、電話ボックスの壁にマイクの影が写っていたりしました。
 

●小説より好きだった戯曲とシナリオ
 
私にとっての映画は演劇の延長線上にありましたし、その関連で戯曲とシナリオにも興味がありました。小説も嫌いではありませんが、演劇三昧の毎日では読む時間がありません。都合のいいことに、当時は古今の名作がどんどん映画化されていましたので、これ幸いと小説を読まずに映画で済ますことになってしまいました。

 
また、小説と戯曲/シナリオを比べた場合、もちろんそれぞれの文学的特質を理解した上ですが、小説は情景描写や心理描写がくどくどしくて文体によっては読みにくい。それに比べると、ほとんど台詞だけで書かれている戯曲とシナリオの方が読みやすい。また、情景描写が最小であるため、自分で状況を想像できるという楽しみがありました。それに戯曲は日常の演劇活動で接していますし、シナリオは大好きな映画に直結するものだということが、小説よりも戯曲/シナリオが好きといういちばんの理由でした。

 当時、前の年に話題を呼んだ映画シナリオを集めたシナリオ作家協会の編纂による「年鑑代表シナリオ集」を書店で見つけ、早速購入(1.500)し、読み漁りました。これは楽しんで観た映画とシナリオを対比して二度楽しむことができ、とても勉強になったのですが、例えば1957年版では
「ビルマの竪琴」「真昼の暗黒」「夜の河」「猫と正造と二人のをんな」などが掲載されていました。この他、1955(S30)年に大ヒットし、ポケットサイズの単行本として売られていた木下恵介監督「野菊の如き君なりき」のシナリオも映画のシーンを思い浮かべながら熟読しました。こうした興味から私がシナリオの習作を書き始めるまで、そう時間はかかりませんでした。

 
いずれにしても、演劇も映画も文章を書くことも高校生レベルでの独学ですから全くのアマチュアです。その上、知識や体験といっても極めて初歩的で断片的なものです。けれども、専門用語の一つでも聞きかじっておいたことが、社会に出て実際にそうした現場に立ったり専門書を見たりすることによって、次第に整理され、体系化されていきました。高校生時代に「ただそれが好き」というだけで一直線に突き進んだ体験も、決して無駄ではなかったと思っています。
 

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●高校の文芸同人誌に、創作やシナリオのようなものを書いたりもしていました。

●高校生の頃観た映画
高校2年生 1957(S32)で観た映画全記録
(この年は日記によるものですから製作年度とはズレがあります)
  2/10 「首輪のない犬」「回転木馬」2本立て
  2/17 「最後の橋」「底抜け西部へ行く」生徒会で割引券
  3/ 1 「青空の仲間」(日活)
  3/14 「居酒屋」「銀盤のリズム」2本立て 150円
  3/24 「米」(松竹)「花は嘆かず」(松竹)
  4/ 2  「白鯨」「攻撃」
  4/20 「白い山脈」「ジャズ娘誕生」(東宝)
  4/30  「愛ちゃんはお嫁に」地元婦人会の映画会にて
  5/11 「戦争と平和」初めてのオードリー
  7/ 2  「南極大陸」「象」
  7/13 「沈黙の世界」「失われた少年」「赤い風船」3本立て
  7/20 「人間と狼」「無法の王者」
  8/19 「春の夜の出来事」
  8/29 「あらくれ」
  9/15 「東京上空30秒」「戦艦シュペー号の最期」
  10/6 「道」「ハッピーロード」
  10/23 「失われた大陸」「抵抗」
  12/15 「雪は汚れていた」「東京特ダネ部隊」

高校3年生 1958(S33) 
   
「八十日間世界一周」「誇りと情熱」「陽はまた昇る」「戦場に架ける橋」
  「火薬に火」「汚れなき悪戯」
  「蜘蛛巣城」「雪国」「喜びも悲しみも幾歳月」「純愛物語」
   
「眼下の敵」「突撃」「情婦」「十戒」「武器よさらば」「ヴァイキング」
    「手錠のままの脱獄」「老人と海」「めまい」「大いなる西部」
    「眼には眼を」
「鉄道員」「女の一生」「河は呼んでる」
   
「死刑台のエレベーター」「ぼくの伯父さん」
  「駅前旅館」「鰯雲」「隠し砦の三悪人」
     そして「人間の条件 一/二部(1959)」を最後に高校を卒業しました。

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●「東洋のハリウッド」元大映撮影所。昔「羅生門」「雨月物語」など数々の名作が生み出されました。現在は角川大映撮影所 東京都調布市

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●撮影所に隣接して立つ「調布映画発祥の碑」と
 日本映画の全盛期を彩った俳優を讃える「映画俳優の碑」
 


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コメント 24

sig

天城玄龍さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-09 07:48) 

sig

lamerさん、こんにちは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-09-09 12:38) 

チョコシナモン

sigさん いつもご訪問nice!ありがとうございます。ブラックベリーのジャム出来ましたか ?(=゜ω゜=;)・・・・・

by チョコシナモン (2008-09-09 17:53) 

sig

チョコシナモンさん、こんばんは。
ちょっと忙しかったのでジャムづくりはまだです。去年収穫したものを冷凍しておいて春に作ったのがまだありますので、当分は大丈夫かな。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-09 18:51) 

ChinchikoPapa

こんばんは。
わたしが大学生だったころ、映研の学生が必死でアルバイトをして16mmカメラを手に入れてましたので、昔に比べてかなり安くなったのでしょうね。ただ、バイトしたおカネはすべてカメラに消え、フィルムの資金を捻出するのにまたバイト・・・という、たいへんな世界だったようですが。いったい、いつになったら撮影が始まるのかと、協力スタッフがやきもきしていたのを憶えています。w
伊藤雄之助も、大好きな俳優ですね。^^
by ChinchikoPapa (2008-09-09 19:49) 

corrado

こんばんは、
いつもご訪問有り難うございます。
高校生の頃を良く覚えていらっしゃいますね!
熱中されていた当時の情熱が伝わってきます。


by corrado (2008-09-09 21:13) 

sig

furukabaさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-09-09 22:52) 

sig

rararinndouさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-09 22:54) 

sig

ChinchikoPapaさん、こんばんは。
16ミリカメラではボレックスやバウアーあたりがポピュラーですが、Chinchikoさんが大学生の頃、新橋駅構内にあった中古カメラ屋さんあたりで、どんなレンズを搭載しているかにもよりますが、30万は下らなかったはずです。フィルムは200ftで5分程度。それを何本も使い、現像もしなければなりませんから、すぐに数10万かかるといった具合です。ですから8ミリは抜群のコストパフォーマンスだったのですね。
伊藤雄之助は顔だけでなく大変個性的に役者でしたが、Chinchikoさんは黒澤明監督「椿三十郎」で彼が演じた人の良いお殿様を見て好きになったのではないでしょうか。(笑)
by sig (2008-09-09 23:37) 

sig

corradoさん、こんばんは。
こちらこち楽しませていただいております。
高校時代は何かが起こりそうな予感があったのか(笑)、たまたま詳細な日記をつけていたのです。日記とは不思議なもので、書いてあることに導かれて、かなり細部まで思い出せるものなんですね。
私の場合、その頃熱中したものが演劇、映画、創作だったというだけで、みんなそれぞれ興味を持った分野で、同じような体験をされているのではないかと思います。そんなことをこのブログから思い出していただければ、と思います。

by sig (2008-09-09 23:47) 

sig

yannさん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-09 23:49) 

sig

xml_xslさん、こんにちは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-09-10 11:48) 

ねこじゃらん

そうか、台詞主体でかかれてると読みやすいんですね〜。
私も小難しいのは苦手です〜。
歴史にも弱い、というより学が無いっていうか。しくしく。
「面白い」本しか読めません。。
by ねこじゃらん (2008-09-10 14:59) 

sig

ねこじゃらんさん、こんばんは。
このブログは文字ばかりで、読んでくれる人がいるだろうかと思いましたが、そもそも自分の「生涯学習」として自分のために始めたこと。
でも、おかげさまでこうして来て頂いて、続けております。
ねこじゃらんさんのブログはほんとに楽しいですね。表現の仕方につくづく世代の隔たりを感じてしまいますよ。(笑)
by sig (2008-09-10 18:07) 

BlackTiger

いっぱい映画観られたんですね。しかも全部記憶されているとは・・
どれだけ熱中されていたかよくわかります。
私は本の方が好きでしたがちゃんと覚えていません。 ^^;






by BlackTiger (2008-09-11 01:05) 

sig

BlackTigerさん、こんにちは。
高2の時は日記にメモってあったのです。考査の時期以外は手当たり次第に見ている感じです。このうちの10本くらい、いわゆる名作ははよく覚えています。本の代わりに映画で済ませていたものですから、原作を読んでいません。映画は監督のイメージがそのまま視覚化されて提示されますから、むしろ書籍の方が自分なりのイメージを膨らませられると思うのです。
by sig (2008-09-11 10:50) 

kontenten

以前にも、お話させて頂いたと思いますが・・・
私が話し方講座(本当は朗読教室でした)の先生は
西澤實先生という方で、NHKラジオの専属脚本家をされておりました。
『懐かしきメロディー』ってお題も先生が付けられました。
その先生の影響もあり、今・・・私のライフワークは芥川龍之介作
『杜子春』を現代風の劇にアレンジした朗読劇のシナリオを作る事です。
現在、仕事の合間に資料を探しておりますが、そもそも理科系な私
まだまだ時間がかかりそうです(><)
by kontenten (2008-09-12 10:38) 

sig

kontentenさん、それはとてもすてきなお話ですね。
「杜子春」の現代風アレンジとは、どんなお話になるのでしょうね。
朗読劇の手法もいろいろあり、朗読だけで聞かせるものから、照明や音響効果を付け、それに演技がつけばもう演劇そのものという手法まであります。どういう機会に、どういう人たちに、どんな場所で、ということも構成上大事なポイントになると思います。いろいろ考えて作り上げるプロセス自体が大変なりに楽しいものですから、いつ見ても楽しいkontentenさんのブログのように、ぜひ楽しみながら進めてみてください。
自分が楽しめないものでお客様を楽しませることはできませんから。
by sig (2008-09-12 21:12) 

sig

銀猫さん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-09-12 21:13) 

sig

プリンさん、こんばんは。ご来館ありがとうございました。
by sig (2008-09-12 21:14) 

sig

八犬伝さん、こんばんは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-13 00:06) 

sig

kemmさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-14 13:32) 

sig

みかっちさん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。

by sig (2008-09-15 10:05) 

sig

甘党大王さん、こんにちは。ご来館ありがとうございます。
by sig (2008-09-19 13:38) 

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