十月号 陽だまり [季節のご挨拶]
十月号
陽だまり
「ミャオ」
「え。な~んだ、君か。いつから居るんだい?」
「ここに駅が出来たときからよ」
「俺もさ。それからずーっとここに座ってる。
お互い背中合わせだから気づかなかったんだ。名前は?」
「ね子」
「分かり易くていい名だ。俺はサッカー。よろしく」
「いつもすてきなジャズを聞かせてもらってるわ」
「ありがとう。こう見えてもあちらの本場仕込みでね。
もう30年も前になるけど…。で、君は?」
「毎日、一冊しかない本を繰り返し読んでるわ」
「どんな本?」
「今日という日はきのうの続き。今日の続きはまたあした…」
「どこかで聞いたことあるような…」
「このページしかないから、毎日毎日、同じ言葉を読み返してる」
「そう。ジャズもそうやって何回も何回も繰り返して…」
「まいにちまいにち…」
「すると、何かが分かってくるような…そう。分かってくるんだよ
ね」
「じゃ、何か1曲、ね子に聞かせて」
「よし。じゃ『霧のサンフランシスコ』プレゼントするよ。俺のお
はこ。若い頃の思い出たっぷりなんだ、この曲」
「30年前の?」
「そう」
「サンフランシスコの思い出?」
「そう。昨日も思い出してた」
「ふ~ん。そして今日も。明日も……ね」
●京王相模原線「若葉台」駅前広場にて。
黒川晃彦さんの彫刻にコラボらせて頂きました。
十一月号 木漏れ日 (動画付き) [季節のご挨拶]
こもれび
人影のない公園に行ってみたくなったら
午後4時過ぎがいい。
それも、断然、11月。
広い庭園に
香りを忘れた遅咲きのバラだけが
孤独な陰を宿している。
極端に傾いた陽差しをほぼ真横に受けながら
思索などしちゃいないのに
しているつもり。
ゆとりなどないのに
満ち足りたつもり…。
そんなこころの深奥を見透かすような
まぶしい反射。
虚飾が拭い去られ、
慰められたような気分になって、
空気も、時間も、自分のためにあると思える
この、たそがれのひと時。
やがて聞こえる、閉園のチャイム。
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十二月号 聖夜 (動画つき) [季節のご挨拶]
十二月号
聖夜
「ねえ、おとうさん。サンタクロースって、ほんとにいるの?」
「いるとも」
「おかあさん。サンタクロース、見たことある?」
「あるわよ」
「どうすれば、会える? パパ」
「それはね、早く寝ることだよ」「眠ると会えるの? じゃ、夢の中で?」
「そうだよ」
「じゃ、早く寝れば、プレゼント届くかな」
「届くわよ、きっと」
「そうかぁ。じゃ、おやすみ、パパ」
「おやすみ」
「おやすみ、ママ」
「おやすみなさい」
メ めぐみの夜の とばりは降りて
リ 流星群を トナカイ渡る
イ いざ、良き子等よ 望みて眠れ
ク 雲間を出ずる 月影冴えて
リ リズムも軽(かろ)く 鈴の音ひびく
ス すぐれて広き イエスのこころ
マ 待てば届くよ サンタと共に
ス すてきな夢を 今日クリスマス
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