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似て非なる「スーパー8」と「シングル8」 [小型映画ミニミニ博物館]

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似て非なる「スーパー8」と「シングル8」
同じ8ミリフィルムなのに、大ちがい。

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●春の兆し

 こんにちは。ようこそ。「昭和館」館長兼「小型映画ミニミニ博物館」キュレーター(学芸員)のsigです。最近、ハイビジョンビデオカメラが出揃って、選びやすくなりましたね。価格もずいぶんこなれてきました。でも、色々あって目移りしそう…。そういう方はぜひこの話を聞いてください。

●「ダブル8」から新規格へ。その共通点は?
 前回はレギュラーエイト、またの名を「ダブル8」と呼ばれた旧タイプと、1965(S40)年春に新しく生まれた「スーパー8、シングル8」のフィルムの違いについてお話しました。

 今回は新しく生まれたもの同士、「スーパー」と「シングル」のちがいについてお話しようと思います。え、同じ8ミリでどこが違うかって? そこなんですよ。海外ではコダックが「スーパー8」を、日本では富士フイルムが「シングル8」のリーダーシップをとって1965(S40)年にスタートラインに立った両者ですが、フィルムのベーシックな規格こそ共通なのですが、システムが全く異なっていたのです。

●「スーパー8」と「シングル8」、どうちがう?
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 では、どこがどうちがったのか。写真を見れば一目瞭然。
左はコダックの「スーパー8」。右は富士の「シングル8」。両方ともマガジン方式なのですが、形も大きさもちがいます。一目見ただけで互換性がないことがお分かりでしょう。細かく言うとコダックのフィルムベースは従来からのアセテート。富士はマガジンを小型にするためにポリエステルにして、ベースも薄くしてあります。

 共通しているところ……それは、8ミリというフィルムの幅、パーフォレーション(フィルム送り穴)の位置・間隔・大きさ、画面1コマの大きさ、撮影速度は1秒18コマ、フィルム1本の長さは50フィート(15m)というところ。……つまり、同じ映写機で上映できるという最小限の約束事は守られました。とはいえ、あとは全く異なっていたのです。それは両社の開発ポリシーそのものが違っていたからでした。

●コダックと富士の差別化戦略とは
 まずコダックの考え方です。映画のフィルムはそもそも19世紀の終わり、1889年(M22)にコダックが発明したものです。歴史があります。誇りがあります。「青はより青く、赤はより赤く」ひときわ鮮やかなカラー発色。コダックはすでに、コマーシャルフォト業界においても国際的に定評を得ていました。実際、広告業界ではコダックを使わないカメラマンはプロじゃない、と見られるほどほとんどのカメラマンがコダックを使っていました。

 そんな中で、8ミリ映画もカラーの時代を迎えていました。「アマチュアもこれからはカラーの時代。コダックは自信を持ってカラーで勝負するぞ!」。その1点に絞ればカメラに難しい機構は不要。誰でも手軽にホームムービーの楽しさが味わえることを徹底的に訴えて底辺拡大を図ろう…。それが米国流の割り切り方だったと思います。


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●スーパー8方式カメラ「キヤノン514XL」のマガジンルーム
 上部の単三乾電池2本でフィルム駆動、ズーム、露出計を作動させる

 それに対して富士フイルム側はどうか。これは推測ですが、今でこそ富士フィルムの映画フィルムはコダックと対等に海外でもたくさん使われていますが、当時の富士カラーの発色は私のような素人目にも、コダックのエクタクロームなどと比べたらかなり見劣りがしました。

 コダックの眼が覚めるような鮮やかな色調に比べて、富士は青みどりがかった発色で、見るからに陰鬱。これを「コダックは油絵調、富士は水彩画調」なんてひいき目に言う人もありました。実際、ドイツのアグファカラーはくすんだ茶系で「泰西名画の色調」と言われていました。ソ連製に至っては色むらが歴然としていました。

 富士はおそらくカラーの品質以外でコダックと勝負せざるを得なかったと思います。そして目指した方向。それは初心者取り込みの戦略商品として「マガジン、ポン!」のラインを充実させながら、一方でコダックの「スーパー8」にできない「シングル8」ならではの機構の開発を急いだのではないかと思います。

●「撮って見るだけ」と「映像で表現する」のちがい
 富士フィルムのそうした考えを如実に物語っているのが「シングル8」のマガジンです。上にフィルムの供給軸、下に巻取軸の一方通行。ですからマガジンの幅は10ミリほどです。この機構ならいったん撮影したフィルムを巻き戻すことができるんです。

 ということは、映画のテクニックとしてポピュラーなオーヴァーラップ(前のカットが消えながら次のカットが現れる)、ダブルエクスポージュア(多重露光)が可能になるのです。そうしたテクニックが使えるとなればトリック撮影もできるし、より映画らしい表現も可能になります。そうすれば将来的にマニアックなユーザーも取り込めるし、「スーパー8」との大きな差別化につながるにちがいない。Simple is Best.といったところでしょうか。また富士フイルムでは優秀なレンズの開発が進んでいました。これもコダックとの開発競争に有利に働く要因になりました。

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●シングル8のマガジン 左/モノクローム 右/カラー

 一方、「スーパー8」のマガジンの軸は真ん中にひとつ。これは実は片側に未露光のフィルムが巻かれていて、撮影後はもう片側に巻き取られていくという2段重ねの仕組みなのです。だからマガジンの厚みが20ミリほどになっています。一見Simpleそうに見えますが、この機構ではフィルムは巻き戻せません。ここが実は「シングル8」と「スーパー8」の(初期における)決定的な違いなのです。

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●左/「スーパー8」のマガジンの軸は1個  巻き戻し不可
 右/「シングル8」は上下に2個     巻き戻し可能

 コダックの「スーパー8」はどちらかというと「きれいに撮れたものをそのまま見て楽しむ」ことを重視しました。その方が客層が圧倒的に広いのです。ところが富士の「シングル8」は、あえて「映像で表現する楽しみ」を求めるクリエイティブな少数派にも重きを置きました。そこが、映像表現を目指そうとするマニアックな人たちから、大きな支持を得たのです。

●「自分は何をしたいのか」でカメラを選ぶ
 前回、「スーパー8、シングル8」が登場したときに、私はそれを冷ややかに見つめたまま古い「ダブル8」のカメラを回し続けていたことをお話しました。8ミリ映画の規格が変わったことは歴然とした事実です。いずれはどちらかを選ばなければなりません。コダクロームの鮮やかさには惹かれました。けれども最終的に選択したのは富士フイルムの「シングル8」でした。私の場合は色彩の美しさを捨てて、いろいろな表現ができる方式として「シングル8」を選び、その旗手である富士フイルムのカメラを選んだのです。

 現在話題になっているハイビジョン・ビデオカメラにも同じことが言えます。「きれいに撮れたものをそのまま見て楽しむ」のであれば、どのカメラでも十分な性能を備えています。ところが「映像で表現する楽しみ」を充足させるとなると、それなりの機構を備えたカメラが必要となります。また大抵「編集」という作業が関わってきますから、パソコンと編集ソフトの兼ね合いからもカメラを選択する必要が出てきます。もしビデオに興味がおありなら、自分がどちらなのかを考えれば、おのずと選択する機種が見えてくると思います。

※オーヴァーラップ(ディゾルヴ)は、8ミリ映画の場合、カメラ側に「フィルム巻き戻し機構」と絞りの「絞り切り機構」を備えていることが条件です。ビデオでは編集ソフトを使って簡単に行えます。

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●スーパー8サイレントカメラ「キヤノン514XL
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■スーパー8(サイレント)機の一例

名  称   キヤノン514XL
メーカー   キヤノン
発売年度        197510月  
形  式   スーパー8マガジン使用(フィルム長50ft)撮影時間3分
レンズ    CANON ZOOM LENS C 8  1:1.4  945mm(5倍)
       マクロ撮影可  

露出計    EE方式
駆動方式   電動式 単三電池2本使用
コマ速度   9コマ 18コマ 1コマ
音  声   サイレント
フィルム感度 ASA25 50 100 200 オートセット
重  量   電池とも650g

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●「キヤノン514XL」
 左上/電動5倍ズームレンズとマクロボタン 右上/ズームレバー
 左下/フィルムゲージ 50ft表示 
 右下/1コマ撮影ダイヤルとセルフタイマー
 



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遊びはお金がかかるもの [小型映画ミニミニ博物館]

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遊びはお金がかかるもの

「映画を遊びたい派」の高級機登場!
「FUJICA Single-8 Z800」

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FUJICA Single-8 Z800で同時録音撮影中(製品カタログより)
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 こんにちは。久々の「小型映画ミニミニ博物館」。館長のsigです。前回、趣味の小型映画の分野では、それまでの「ダブル8(レギュラー8)」方式に替わって1965(S40)年に「スーパー8」と「シングル8」と呼ぶ二つの方式がほとんど同時に登場しましたが、両者はフィルム幅と1コマの大きさが同じであるだけで、カメラのメカニズムはまったく異なるものであった、ということをお話しました。

 一方、ユーザー側の楽しみ方には二通りありました。「撮ったものをそのまま即楽しむ派」と「映画を遊びたい派」です。現在のビデオカメラの楽しみ方も、この二派のユーザーに分かれている状況はまったく共通しています。

●商業映画は衰退期へ。8ミリ映画は発展期へ
 間もなく2種の8ミリカメラを生産するメーカー陣営も明確になりました。「スーパー8」の陣営は、開発メーカーのコダックを筆頭に、小型映画の雄・エルモ、そしてニコン、キヤノン、ミノルタ、コニカ、サンキョー、チノンなどもともとカメラで著名なメーカーが多かったのですが、「シングル8」は開発メーカーの富士写真フイルム(当時)がほとんど1社で強力な国際PRを展開するなどして孤軍奮闘していたような気がします。


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●Nikon 8X SUPER ZOOM      ●ELMO SUPER 110 

 スーパーかシングルか……ユーザーの戸惑いも一段落すると、アマチュアムービーのファンは一気に拡大します。ちょうど現在のビデオカメラがそうであるように、冠婚葬祭や旅行はもとより家庭や学校行事の記録など、いろいろな場所で8ミリカメラを回す人たちの姿が見られるようになりました。メーカーが主催する「8ミリ映画コンテスト」やカメラ店が主催する「8ミリ撮影会」などもその後押しに大きく貢献したと思います。1975年(S50)には8ミリカメラの年間総売上台数が最高の324,000台を記録したそうです。

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●左/1969「男はつらいよ」第1作 中/1970「anan」創刊
 右/1970「仮面ライダー」開始        毎日新聞社「戦後50年」より

 反対に「スーパー8」「シングル8」が登場した1960年代は、商業映画が目に見えて衰退した時代でした。1965(S40)年には松竹京都撮影所閉鎖。66(S41)年の映画観客数は最盛期の三分の一という状況でした。更に1971(S46)年には伝統ある日活がロマンポルノ路線に全面転換。この年の暮れには大映が倒産。東映はやくざ路線に転向、という具合です。このように商業映画が没落していく一方で、アマチュアの8ミリ映画が隆盛を極めていく様子は、ある意味で皮肉なことでした。

●各社揃い踏みの中で、高級機も出揃う
 さて、アマチュア映画の世界では、スーパー8派とシングル8派に分かれて、それぞれの特徴を生かした作品づくり…つまり、スーパー8派は主にカラーのすばらしさを。シングル8派は主に映画的表現を生かした作品づくりで妍(けん)を競うことになるわけです。
 カメラはすべて電動式。モノクロ、カラーとも高感度フィルムの出現に合わせて露出も自動。ズーム倍率も3倍から5倍、5倍から8倍へと急速に拡大していきました。


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●Canon オートズーム1014エレクトロニク

 こうして1970年初めには、誰でも手にしたその時から写せる普及機から、写しただけでなくごく簡単な編集をという階層向けの中級機、そして本格的な映画づくりを目指すマニア向けの高級機まで、成熟した市場の中ですべてのラインが揃いました。
 その中で、カラーの美しさでははっきりと「スーパー8」に差をつけられながら、「映画あそび」の楽しさを満たしてくれたもの、それが「シングル8」でした。その中の名機と称される機種のひとつが「フジカZ800」です。


●何でもできるカメラの最高峰「フジカZ800」登場
 1970
(S45)年12月、「フジカZ800」は「シングル8」でしかできない映画テクニックの機能を満載して登場しました。
 まず第一の魅力は、ズーム比8倍。遠い被写体を引き寄せる効果が大きいのはもとより、望遠側ではボケの美しい画面づくりや、望遠独特の遠近感を凝縮させた密度の濃い描写ができます。また、近景から遠景へ、あるいはその逆の「ピン送り」や、歩いてくる人物のサイズを維持しながらズームアウトするといったドラマチックなテクニックも可能です。

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●定評あるフジノン8倍ズーム搭載の「フジカZ800」

 次に撮影スピードですが、標準スピードの1秒18コマの他に、1、24、36コマを装備。1コマ撮影という機構はアニメーションづくりを可能にします。1秒24コマは映画と同じモードで、トーキーにする場合に音質重視の画面づくりができます。また36コマの撮影スピードは2倍の高速度撮影になります。

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●左/シングル8特有のフィルムカートリッジ
 右/1コマ撮影の表示とシャッター開角度調整ダイヤル
   光量を1/2~1/4~Closeまで調整可能。


 そしてマニアにとっていちばんうれしいのは、絞り羽根を完全に閉じられる機構とフィルム巻戻し機構です。この機構によって初めて、本物の映画と同じフェードイン/アウト(溶明/溶暗)、ディゾルヴ(溶暗と溶明を重ねた画面転換)、ダブル・エクスポージュア(多重露光)が可能となるのです。まさにこの点が「スーパー8」に対抗できうる「シングル8」最大の差別化ポイントなのでした。

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●左/フィルム巻き戻しハンドル 
 右/巻き戻し量に連動のフィルムメーター
 
  

 
これらのテクニックは、「撮影したものをそのまま上映して楽しめばそれで十分」、という楽しみ方にはまったく不要なものです。けれどもその対極にある「映画を遊びたい」という人たちにとっては本当にうれしい機構なのです。一般の人たちが必要としないこうした機構を搭載したカメラは当然高価なものになります。ですから「フジカZ800」は「シングル8」の最高級機として登場したのでした。

●8ミリカメラは最高峰を極め、サウンドの時代へ
 「フジカZ800」の更にすごいところは、同時録音撮影に対応させたことでした。
 動く写真を手に入れれば、次は音声がほしくなるのは人情というもの。8ミリ映画も映画の歴史をたどるように、次はトーキー時代を迎えることは明白でした。その先鞭をつけたのが「フジカZ800」だったのです。

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●左/パルスシンクシステムによる撮影形態
 右/1コマごとにパルスで同調するカプラー(上)とテレコ接続ジャック(下)

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●パルスシンクコーダーを映写機に接続してトーキー映画の上映(カタログより)

 「フジカZ800」には別売の小型テレコが用意されていて、カメラ本体とつなぐことによって1コマ単位で音声を完全に同調できる「パルスシンク」という方式がとられていました。これは画期的なことでしたが、間もなくもっと簡単に同時録音撮影ができる仕組みが生まれました。カメラの中に録音ヘッドを組み込んだサウンドカメラの登場です。当然、フィルムカートリッジも変更され、フィルムの両サイドに磁気帯を塗ったサウンドフィルムが発売されるようになりました。
 また、すでに撮影したフィルムにも音楽やナレーションをつけられるように、フィルムに磁気帯を塗布するサービスも生まれました。こうして8ミリ映画界もトーキーの時代に入っていくのです。


■電動式シングル8高級機の一例
名  称 FUJICA Single8 Z-800
メーカー 富士写真フイルム
発売年度 1971
形  式 電動(手動)8倍ズームレンズ付きシングル8  
レンズ  フジノン・Z  1:1.8 f=8~64mm 8倍ズーム     
露出方式 EE方式
コマ速度 1. 18. 24. 36コマ  
音  声 パルスシンク方式による同時録音可能(テレコ別売)
フィルム感度 自動セット   ASA 25.50.100.200.400
その他  シャッター開角度調節可
     シャッタースピード3段階
     フィルム巻戻し機構(手動クランク)
     フィルムカウンター(巻戻しに連動)
駆動方式 電動モーター 単三電池4本使用
重  量  1.5kg 電池別

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みんな、まとめて面倒みます。 [小型映画ミニミニ博物館]

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みんな、まとめて面倒みます。
ダブル&スーパー/シングル共用映写機が好評
SANKYO Dualux 1000

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 こんにちは。「昭和館」館長兼、ミニミニ博物館キュレーター(学芸員)でもありますsigと申します。8ミリ映画の「スーパー8」と「シングル8」。前回は1970年代前半のカメラを紹介しましたが、今回は映写機のお話です。

●「スーパー」と「シングル」、フィルムの違い
 1970年代は「スーパー8」と「シングル8」の二つの方式がせめぎあいながらも8ミリ映画の全盛期でした。この2種類はモノクロでは違いは見られないのですが、カラーの発色が大きく異なりました。「スーパー8」はとにかく鮮やか。「シングル8」は青みがかっていました。これはフィルムメーカーの特徴と言えるかも知れませんが、使う側では好みがあります。

  で、ユーザーは「スーパー8」派と「シングル8」派に分かれたわけなのですが、中には、カラー作品や大事な作品を撮る時は「スーパー8」。モノクロ映画と気の置けない作品を作る時は「シングル8」というように、2種類のカメラを使い分けていたお金持ちもおりました。

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●一見、同一規格のシングル8(左)とスーパー8(右)
 メーカーの特徴で、カラー発色とフィルムベースの厚さが異なっていた


 またこの2種類のフィルムは、8ミリ幅と画面の大きさは共通でしたが、フィルムベース、つまりフィルムの材質が違いました。コダックが開発した「スーパー8」は一般の映画フィルムと同じアセテート。富士が開発した「シングル8」は、磁気テープと同じポリエステルなのでした。そしてそれはカメラの小型化をねらってフィルムの厚さが「スーパー8」より30%ほど薄く作られていました。ですから、スーパーとシングルのフィルムをいっしょにつなぐことはできません。そうすると、映写した際にピントがずれてしまうからです。

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●ベースの厚さが異なるスーパーとシングルは、同じリールで巻ける長さが違った

 また、フィルムベースの厚みが違うということは、同じ大きさのリールに巻ける長さが異なることになります。どの映写機も「スーパー/シングル」共用で、最大直径20.5センチのリールを使える設計になっていましたが、そのリールに標準スピード(1秒18コマ)で撮影した「スーパー8」は180m(600ft)30分まで、「シングル8」は234m(780ft)45分のフィルムを巻くことができました。(ただし、写真のSANKYO Dualux 1000 は直径18cm 120m 400ft シングル8で27分まで)

●「レギュラー8」との共用映写機の登場
 「スーパー8/シングル8」になってから8ミリ映画を始めた人たちは、それ用の新しい映写機で映画を楽しめばいいわけですが、それ以前、つまり「ダブル8(レギュラー8)」の時代から8ミリ映画をやってきた人たちは、フィルムのパーフォレーションと画面の規格が変わったため、それまでに撮影した「ダブル8」のフィルムが見られなくなるわけです。そういうことのないように考えられたものが、「ダブル8」も「スーパー8/シングル8」もどれでも掛けられるという3タイプ共用の映写機でした。

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●左/左はスーパー/シングル8、右はレギュラー8(ダブル8)
●右/赤いボタンで、S(スーパー/シングル)とR(レギャラー)を切り替える


 これはいわば過渡期の製品というメーカー側の心積りもあり、トーキー機構は組み込まないため比較的廉価なものでした。その代表的な機種が三協精機の「SANKYO Dualux 1000」です。三協精機はオルゴールで有名なメーカーですが、8ミリ時代にはカメラ、映写機ともに数々の名機を輩出していたメーカーでした。

●横90cmから120cm程度のスクリーンが一般的
 「SANKYO Dualux 1000」は1973(S48)年頃に登場しましたが、この頃になると初期の映写機の光源が8ボルト・50ワット程度だったのに比べて、100ボルト・150ワットと格段に明るくなった一方、カラーフィルムの色調も改良されて、横90cmから120cm程度のスクリーンできれいなカラー映画を楽しめるようになりました。映写レンズも大体4畳半か6畳間でその画面サイズが得られるように設計されていました。


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●右がレンズ部                                   ●シャッターと1コマの窓が見える 

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●電子部品やプリント配線ではなく、歯車や回転装置、配線などがアナログの真骨頂

 また「ダブル8」時代には面倒だった映写機にフィルムをかける機構も改善され、フィルムの先端を差し込むだけで自動的に巻き取りリールまでフィルムが流れていくオートローディングが一般的になってきました。これによって、かなり「8ミリ映画は操作が面倒」というイメージが遠のいた感じがします。
 「SANKYO Dualux 1000」は、フィルムを掛けた後はスイッチを入れるだけでよく、誰にでも簡単に操作できるとても気の利いた映写機でした。


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●オートローディング 
 フィルムの先端を差し込むだけで、自動的に巻き取りリールまで到達


■R/S共用映写機(サウンド不可)の一例
名  称 SANKYO Dualux-1000
メーカー 三共精機
発売年度 1973(S48)or 1974 
形  式 R(レギュラー8)/S(スーパー8、シングル8)共用
レンズ  SANKYO ZOOM  1:1.4  f=15~25mm
フィルム装填 フルオートローディング方式
映写スピード 14コマ/sec~24コマ/sec 無段階可変式
            1コマ止め可能 逆転映写可能
映写ランプ ミラーコンデンサータイプ 100V  150W
最大リール 120m(400ft) 映写フィルム自動装填
音  声 不可
躯  体 軽金属
重  量 3.5kg
価  格 31,800円

●テープの使用で編集作業が飛躍的に簡易に
 
編集につきもののフィルム接合作業は、「ダブル8」ではフィルムセメントを使い、とても煩雑な作業でしたが、「スーパー8/シングル8」では8ミリ映画の編集専用に開発された特殊なセロテープ(スプライシングテープ)を使うことにより、簡単に接合できるようになりました。
 また、編集機も、手回しのものから電動式へと発展しました。

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●新方式のフィルム接合機「テープ・スプライサー」

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●左/テープに穴が開いていて、パーフォレーションに合わせてフィルムの両面に折り返して貼り付ける
 右/接合されたフィルムの裏と表 


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●それまでの手回しに代わって、電動式のエディター(編集機)も現れた

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「せえのー…それっ!」じゃ、時代遅れジャン。 [小型映画ミニミニ博物館]

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「せえのー…それっ!」じゃ、時代遅れジャン。
1970年代、8ミリ映画にもトーキー時代到来
ELMO ST-600 2-track

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 みなさんのビデオカメラは、構えてシャッターを押せば画像といっしょに音声が記録されます。当たり前のことですね。この当たり前が、当たり前でなかった時代があったのでした。8ミリ映画がサウンドを持つようになったのは、1970年代でした。

●「完全同時録音」のシステムをどう組むか
 1970年代、8ミリ映画界はそれまでの「レギュラー8」を完全に過去のものとし、カメラメーカーも映写機メーカーも、「スーパー8/シングル8」のサウンド化へ向けていっせいに進路を取りました。映画の歴史をたどるように、アマチュア映画界がサイレントからトーキーへ進化しようとした時、その前に立ちはだかったのは、撮影と同時に音声も記録する「完全同時録音」のシステムをどう組むか、という大きな壁でした。

●8ミリマニアのニーズは厳しかった
 映画の同時録音は、プロの世界ではカメラ(撮影機)とテレコ(録音機)をパルスで同調させる方式ですが、アマチュアが一人で一度に操作できるものではありません。

1966 NAGRA swiss2.JPG●プロ御用達・超高級録音機 スイス製「ナグラ」

 それまでは例えば、前に紹介した富士フイルムの「フジカZ800」のようにパルスシンク方式の高級カメラがありました。けれどもそれ以外は手動で「せえのー…」とカメラと小型テレコのスイッチを同時に入れて立ち上げる「スタート同時録音」しか方法がありません。これだと当然のことながら、時間が経つにつれて画面と音声がどんどんずれていってしまいます。

 マニアは、本物の映画のように、話をしている人の口元と言葉がぴったりと合う完全同調の「リップシンクロ」を願っていたのです。どんな世界もそうでしょうが、こうした熱心なハイエンドユーザーの願望や要求が、高度な製品開発を促すのでしょうね。


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●カメラとテレコをパルス信号で完全同調させた「フジカz800」1970(S45).12

●撮影も録音も、言ってみればテープじゃないか
 メーカー側もユーザーに催促されるまでも無く、当然「完全リップシンクロ」を目指して開発を急いでおりました。そこで考えられたのが、画面と音声をいっしょに撮るのなら、フィルムと録音テープをいっしょにしちゃえ、というアイディアでした。つまりどっちもテープじゃないか、という訳です。フィルムの両サイドに細い磁気録音帯を塗れば、フィルムも録音テープとして使えるというすばらしい発想です。

 するとカメラの中にテレコの機構を組み込まなければなりません。カメラには音声を採るためのマイクも必要です。全体的に大きく重くなります。でも、背に腹は代えられません。リップシンクロの魅力はそれを補って余りあるだろうとの自信がメーカー側にはあったと思います。フィルムに磁気録音する方式は、当時としては商業映画の35ミリや70ミリなどに先駆けた
画期的なシステムだったのです。

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●左/磁気録音帯を塗布した磁気サウンドフィルム  上はその塗布機

●サウンドフィルムの登場で、音声付き8ミリ映画時代に
 こうして、カメラの上にものものしくマイクをかざし、内部にテレコを仕込み、磁気録音帯を塗ったフィルムに画面と音声を同時に記録するサウンドカメラが雨後の竹の子のように登場。互いに人気を競うことになります。

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●8ミリサウンドカメラの例 1977-1978頃

 ただ、8ミリユーザーはそれまでにサイレントの作品をたくさん作っている訳ですから、まずそれに音楽を入れようか、という人たちも多く、はじめはサウンドカメラの販売よりもサウンド映写機の需要の方が先行したように思います。
 音声を入れるためにはフィルムに磁気録音帯を塗らなければなりません。そのために編集済みのフィルムをメーカーに送って塗ってもらわなければなりませんでした。また、専用の塗布機を買えば自分で塗布することもできました。

●録音帯は2トラックだけれど、ステレオにあらず

 ここにご紹介するサウンド映写機は、1977(S52)年に発売された「ELMO ST-600」です。この機種は高度な録音テクニックが比較的簡単に操作できるということで人気のあった中級機です。
 「スーパー8」と「シングル8」はマガジン形式は異なりますがサウンドフィルムの仕様は共通で、フィルムの両サイドに太めと細めの2本の磁気録音帯が塗布してあります。カメラで撮影すると太めのトラック1に同時録音されます。

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●上2枚内部写真 レンズ位置は左で、左側にフィルム送り装置が密集

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●左/レンズを右にしてシャッター部を見たところ
 中/映写機背部にあるヒューズなど

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左/本体内裏ぶたのスピーカー(モノラル) 右/別売スピーカー(モノラル)

  一方、映写機にも録音装置が組み込んであって、2本のトラックに別々に録音できるようになっています。そこで、編集済みのフィルムを映写機に掛けて、細めのトラック2に音楽を録音します。これを上映する時に、両方のトラックの音声をミックスしてスピーカーから出せば、現場音にBGMが付いた映画になるという寸法です。

 音楽とナレーションを入れたいというマニアは、別にテープレコーダーとミキサーを用意して本格的なレコーディングを行うことになります。映写機を使った録音では、音声の微妙な調整は無理に等しく、あくまでも簡易な音付けに利用したいというニーズに応えるものでした。

 

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●ふたを開けたところ フィルムは右上から左の巻取りリールまで自動装填
 中央の光源はハロゲンランプ レンズの下が磁気録音・再生ヘッド


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●右/録音・再生ヘッド部 右のランプは光学トーキー再生時に点灯させる

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●左上・赤いバーの下は、M(磁気)とO(光学)の切替えスイッチ
   真ん中はサイレント
 右上は磁気録音の場合の2本のサウンドトラックの切替えスイッチ
   センターに合わせると2トラックがミキシングされて出力される


●市販ソフトが楽しめる「光学録音」対応
 特筆すべきは、上記の磁気録音の他に、光学録音されたフィルム…いわゆる劇場公開された本物のトーキー映画を楽しめることができるようになったことです。自分の作品を光学録音にすることはできませんが、市販ソフトを上映して楽しめるのです。現在、映画はDVDやブルーレイディスクで楽しめますが、そのはしりでしょうね。ただフィルムはとても高価な上、1本の作品を丸ごと見ることはできなかったのです。そのあたりのことはまた、回を改めてお話しすることにしましょう。

 こうして、曲がりなりにも8ミリ映画は音声を備えました。8ミリ愛好家はわれもわれもと、こぞってサウンド映画の作品づくりへと突入していくことになります。


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●左/市販のトーキーフィルム(フィルム右側の縦線がサウンドトラック)
 右/市販・光学トーキー映画の広告 1978 
   例えば「鉄道員」を15分にダイジェストして23.000円 
Oh My God!!

■2トラックサウンド映写機の一例
名  称 ELMO ST-600
メーカー エルモ
発売年度 1977(S52) 
形  式 スーパー8、シングル8共用
     サイレント、磁気・光学式サウンド切替え
     磁気録音の場合、アフレコおよび 2トラックミキシング再生可能
レンズ  1:1.3  f=15~25mmズームレンズ
映写スピード 16コマ/sec、24コマ/sec 逆転映写可能(音声なし)
電  源 100V 200W
映写ランプ  コールドミラー付きハロゲンランプ 12V  100W
モーター 直流マグネットモーター
最大リール 180m(600ft) フィルム自動装填
重  量 3.5kg
価  格 112000円
スピーカー 別売

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結婚披露宴の記録は13分もあれば十分! [小型映画ミニミニ博物館]

P1030925b-3.jpg  小型映画ミニミニ博物館-15
結婚披露宴の記録は13分もあれば十分!
ELMO 612S-XL 
MACRO

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こんにちは。「昭和館」館長兼、ミニミニ博物館キュレーター(学芸員)でもありますsigと申します。しばらくぶりに「小型映画ミニミニ博物館」の展示物をご覧いただくことにしましょう。3回ほど続けて、スーパー8方式の同録カメラをご紹介します。

●レコーダー一体型、同録8ミリカメラの時代へ
 8ミリ映画にもぜひ音声が欲しい。その望みがかなえられたのは1970年代後半でした。はじめはカメラとは別に小型テレコを肩からぶらさげて、両方をコードでつないでパルスで連動させる同時録音方式が採られました。

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●フジカ シングル8 Z800によるパルスシンク同録撮影 1971

 ところが、小型を身上とするアマチュア機材としては、やはりカメラと録音システムが一体であることが望まれました。そこで登場したのが録音デッキを搭載した8ミリカメラでした。1980年を迎える頃には、各社一斉にこのタイプに変わりました。(8ミリ映画のトーキーの仕組みについては前回の記事参照)

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●同録になって、カメラの各種機構も進化
 コダック系の「スーパー8」も、富士フイルム系の「シングル8」も、同録カメラは機体上部に小型マイクロフォンが付いていますから、一目ですぐに分かりました。いかにも「俺のカメラは高いんだぞ」という感じでしたね。

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 フィルムマガジンの中のフィルムには細い磁気帯が塗ってあります。マガジンをカメラに装填すると、ちょうどカメラ内部のテレコの部分にフィルムがうまくはまるようになっています。だから、シャッターを押すだけで画面と音声が同時に録れるわけです。

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●左/スーパー8のサウンドフィルム用フィルムマガジン
 右/現像後のフィルム 両脇に磁気帯が塗付されている 

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●左/カメラ内下部にある録音用サウンドヘッド 右/アパーチャー部分
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●スーパー8の場合、マガジンがこのように装填され、
 サウンドヘッドの隙間にフィルムが入って、音声が磁気帯に録音される


 フイルムはカラーとモノクロでは当然感度がちがうのですが、マガジンを入れただけで自動的にカメラ側がフィルム感度を認知して適正露出を保てるというユーザーフレンドリーな仕組みも備わりました。
 駆動力は相変わらず単三バッテリー6本(9V)でしたが、強力なパワーを備えた長寿命の乾電池が生まれていました。またレンズ関係ではマクロ撮影ができるようになりました。

●初心者にもマニアにもうれしい先進機能の数々
 ここにご紹介するのはELMO 612S-XL。スーパー8の同録カメラです。


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●ボディ右側には同時録音関係の入出力やボリュームダイヤルなどが見られる
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              ●マクロ操作部

 その魅力はいろいろありますが、まず、ワンタッチでマクロ撮影に切り替えることができたこと。それによって広角側の接写撮影でもきれいな背景のボケを表現できるようになりました。現在のカメラでは当たり前の機構ですが、この頃にその起源があるようです。

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●セルフタイマー       ●フォーカスフリー(FF)

 また、セルフタイマーが付いているのもユニークです。これは多分、なかなか自分を8ミリ映画に登場させることができないカメラマン自身からの要望があったのではないでしょうか。
 また、フォーカスフリーと呼ぶ機構も付いていました。これはピント合わせリングを一定の位置にロックしておけば、その都度いちいちピント合わせをする必要がない、というもので、チャンスに強いカメラといわれました。


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●左/60mマガジンを装着   ●60mマガジン装着箇所

 こうした初心者向けの他に、ハイアマチュア、あるいはセミプロ向けの機構も付いていました。それは別売になりますが60mのフィルムマガジンを付けられるようになっていたことです。通常のフィルムマガジンはたった15mで、時間にしてわずか3分20秒しか撮影できないのです。60mはその4倍。13分強の連続撮影ができるのです。「これによって結婚式や舞台撮影などもOK」と、カタログでアピールしています。

 現在のビデオでは披露宴の最初から最後まで2時間や2時間半なら問題なく写しっ放し、という方法がとれますが、8ミリ映画の撮影法は、ここぞと思うところしかカメラを回さないというやり方でしたから、60mもあればハイライトは押さえることができた訳です。もちろん編集ができる人は、60mのフィルムを何本も用意して撮影したことでしょう。

●カメラは別でも映写機は共通
 音の出る映画・トーキーが8ミリ映画でも一般的になると、8ミリ映画コンテストなども音声付きの応募が急激に増えました。1980年前後のコンテストは、それまでになく高度に練り上げられたトーキー作品で華やかに彩られました。


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 けれども、8ミリ映画に音声をつける作業は誰にでもできることではありませんでした。メーカーはマニア向け機材を開発し続ける一方で、普通の人たちに向けた「私にも写せます」調の簡単カメラも続々と打ち出して、二極分化の様相を呈しているユーザーのニーズに応えました。

 フィルムの方式が「スーパー8」と「シングル8」に別れていたことは、ユーザーにとってある意味で悲劇でしたが、それはフィルムペースとマガジンの仕様が異なるだけで、現像後のフィルム規格は幸いにして同じでした。そのため、映写機はどちらの方式で撮ったフィルムでも上映することができました。これは幸いなことでした。

●16ミリに匹敵する利用法まで発展
 音声付きでの撮影が実現したことで、現像上がりを待ってすぐにトーキー映画を楽しみたいという人が増えました。一方マニアはより高度な音質を求めました。こうしてトーキー映写機の開発競争は熾烈を極めました。

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●大公開用ステレオサウンド8ミリ映写機 ELMO GS-1200 
 光源はキセノン 360mリール使用可能
 磁気トーキー、光学トーキー両用 光学では1秒24コマで1時間の連続上映可能


 また、映写機のユーザーは個人とは限りませんでした。教育関係の映画会社などが既存の16ミリ映画を8ミリにして売り出したことによって、公共の機関や学校などでも8ミリ映画を上映するようになり、大きな会場の上映にも対応できる高級機が生まれました。こうして8ミリ映画の技術は加速度的に成熟期を迎えます。 
つづく

■スーパー8 サウンドカメラ 仕様
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名  称   ELMO SUPER8 SOUND 612S-XL 
MACRO
メーカー   エルモ
発売年度   1978(S53) 
形  式   スーパー8 磁気サウンド方式
レンズ    F1.2  f=8.5~51mm 6倍ズーム フォーカスフリー
撮影スピード 24コマ/sec、18コマ/sec 1コマ撮り可
絞り     5枚羽根TTLサーボEE  マニュアル絞り可能
       絞り切り可能
フェード機構 フェードボタンで可能
       サウンドフィルムでは画と音の同時フェード
重  量   1.55kg
価  格   本体 138,000円

シマンテックストアデル株式会社
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